Wither | 悪霊のはらわた


枯れたプロットの水平思考

作品データ

2013年 スウェーデン 監督:サニー・ラグナ 出演:リサ・ヘンニ、パトリック・アルムクヴィスト、ヨハネス・ブロスト

レビュー

言ってしまえば、スウェーデン版の「死霊のはらわた」リメイク。完璧に「死霊のはらわた」である。そして、そのプロットは完全に枯れたものだ。

もうすぐ結婚するイダとアルビンは友人たち5人と山小屋にルンルンバケーション。キャッキャとはしゃぐ一行を遠くから見つめるオッサンが不穏な雰囲気を醸す。山小屋に無事到着する一行。
ひとしきりイチャ付いた後、酒を飲みワイワイと騒ぐ彼ら。しかし、友人の一人マリーの体調がすぐれない。実はマリーは、先回りしてアルビンたちを驚かせようと、先に山小屋に入っていたのだが、そのとき地下室で「何か」に遭遇していたのだ。「何か」に魅入られたせいでみるみる体調が悪化するマリー。
  
  
トイレに引きこもった彼女は、股間から血尿をほとばしらせ、血へどを吐き、しまいには目からも出血し卒倒する。そこへ様子を見にきたイダの友人トーブが声をかけると突如凶暴化し、トーブの口を食いちぎる。突然の出来事にパニックに陥る一行。マリーを縛り付けなんとか場を納めるが、一体彼女はどうしてしまったというのか?そこへ昼のオッサンが登場し「彼女はもう”別の何者”かになってしまった。もう死んでいるんだ。あきらめろ。地下深くに済む邪悪な存在に見初められたのだ。別の何かへの変貌は伝染する、噛まれたれたら終わりだ」などと意味不明なことを口走る。オッサンは、数日前この山小屋の森で突如凶暴化した妻に娘を食い殺されていたのだであった。
そして、口を食いちぎられ絶命したはずのトーブが目覚め、一行に襲いかかる・・
  
  

ゾンビなのか、何かに憑依されたのか、サッパリワカランのだが
・体液に触ったらアウト
・噛まれたらアウト
・引っかかれてもアウト
・本体(Vittra)に至っては見つめられただけでアウト
という、謎の伝染する禍災を巡って、若者7人とオッサン1人が血みどろのドタバタ劇を繰り広げる。

禍災の元となるVittraとは、北欧の民間伝承の生物。普段は地中に住み、姿を見ることは出来ないらしい。地方によってその特性は異なるようで、調べてみるとネイチャースピリットがどうのこうの、アニミズムがどうのこうのと、簡単に言うと「魂」の意味もあり、結局はアレです。「死霊」と変わらんみたいです。
作中に登場する実体を伴ったVittraは細いゴーレムのよう。よくある悪魔的な造形よりは鈍臭く北欧らしくプチトロールといった体である。
  
  

「死霊のはらわた」との類似性だが、変貌後のマリー女をみて「あの目を見た?」という台詞や、トーブが彼氏の目の前で変貌する場面は、「死霊のはらわた」を観たことがあれば、即「あ・・」っと思うところだ。さすがにステディカムは使われないが、水平感覚を失ったカメラワークも非常に「はらわた」と共通している。
直接接触でいわゆる「死霊化」の感染する部分はオリジナルだが、使われ方があからさまではなく「いつの間にか感染していた」というもの、ゾンビ映画にあるようなわかりやすさは無い。この部分も「死霊のはらわた」に近いといえるだろう。

  
  

しかし、徹頭徹尾「死霊のはらわた」かというと、そうでない。根本的に違うのは、アニメな破壊描写によるコメディ要素が皆無なのだ。
ゴア描写に遠慮は無く、終始血みどろだが、「白い意味不明な液体」をブベーっと吐き出したり、切り落とされた四肢が痙攣したりはしないのだ。キッチリとした人体破壊となっている。
今時、こういう豪快な人体破壊が観られる映画には、スラップステック・コメディのような笑いを注入してしまう。これは80年代にスプラッタームービーが流行した時代からの受け継がれているものだ。「恐怖感」などは皆無。

ところがこの「Wither」は”赤黒いだけで何がなにやらわからない”ほど徹底的にぶっ壊す。人体だけで無く助かりそうな人間もストーリーごと片っ端から破壊し続け、最後に残るのは人体パーツの山。笑ってしまうほど手の込んだ拷問装置も無ければ、滑稽な動作もない。ファンタジーが無い破壊だ。
これは非常に「恐怖」を煽る。ただ単にぶっ壊すだけというのは、実はかなり怖いのだ。今時の拷問ホラーは、奇をてらった表現やめんどくさい動機付き頼りすぎ、そんな基本を忘れてしまっている。

中途半端だった「死霊のはらわた」のリメイクが気に入らなかった向きにはお勧めしたい作品。

あ、そうそう「Wither」って”枯れる”という意味の動詞です。
監督のサニー・ラグナは、2011年に雪山が舞台に若者が不死身の食人鬼襲われるという、これまた枯れた内容の作品「Blood Runs Cold」を5000ドルという超低予算にて制作している。これが結構面白いの近々ご紹介します。

2013/10/10 追記
「悪霊のはらわた」という、「あ、その枠はなかったわ!」という邦題で2014/01/04に日本でもDVDが発売されます。

“Wither | 悪霊のはらわた” への2件の返信

  1. お久しぶりです

    徹底的な破壊描写・・・・確かに最近の破壊描写っつうとギミックに拘りすぎて
    実際は結構サラリとした作品が多い気がします。
    本作は味噌も糞も判らないぐらいな描写のようで、非常に楽しみです

    悪霊のはらわた・・・こりゃまたえらく意識したようなタイトル。
    Dead snowがあっさりしたタイトルだったので、これはこれでいいのかな?
    ちなみにゲロゾイドという映画で一度使われているタイトルですが
    まぁ気にすることのほどではないですね

  2. >腐肉喰らいさん
    どうもどうも!!
    本作はかなり頑張ってますよ!今、「死霊のはらわた」を
    作り直したら、こんな感じなんだろうなぁって思います。
    鬱陶しい設定は徹底的に排除して、「何か邪悪なもの」が
    「ノーテンキな若者」をボッコボコにするだけというシンプルさが
    なんとも潔く、見ていてとても気持ちがいいものでした。

    ゲロゾイド!そうだった!すっかり失念してました。
    トロマ配給として何故か「悪霊のはらわた」のタイトルでも出てましたね・・。
    まぁ、おっしゃるとおり気にするようなことでもないですが。。
    うーーーむ!!!

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