Tilt | ティルト

2018年 アメリカ
監督: Kasra Farahani
->imdb
気が触れていく。ただ、気が触れていく……。

あらすじ

 映画監督ジョセフの人生は行き詰まっていた。作品製作は遅々として進まず、過去にヒットしたドキュメンタリー映画『Tilt』の印税も底を突きかけている。家計は看護師である妻ジョアンヌの収入だけが頼り。だがジョアンヌは妊娠中。しかも医大への進学も希望している。

職無し、金無し、嫁は妊娠。どん詰まりである。

 ところがジョセフは「少しの収入を欲しい、映画製作の合間でも、とにかく良いから仕事をして欲しい。」とジョアンヌから言われても上の空。金が無いから携帯が持てないことを友人から馬鹿にされ、飼い猫はモグラの死体が握手を放つ、お気に入りのサボテンは枯れ、TVを観れば大嫌いな政治家が大演説。夜の散歩道ではガラの悪い若者や臭い浮浪者ばかりが目に付く。全てが映画製作を妨げるストレスと感じ取る彼。
お前、誰やねん・・・。

そして何故増えるねん・・・。

 ある夜、散歩していると、頭から血を流しカメラを構える日本人の幻影をみるジョセフ。ふと頭に浮かんだのは”CHUSUKE HASEGAWA”という人名。気になって、ネットで調べてみても解らず。一体、なんだというのか。

サボテンは枯れるし、縁の下には、猫が狩ったモグラが死んでるし。もうヤダ!

レビュー

 ジョセフの様子は最初からおかしい。家の鍵を必ず2回閉める(閉めて、開けて、閉める)ことから強迫神経症気味であることがうかがえるし、一日中寝ていたり、何をしても上の空で、庭いじりをする妻の手をうっかりスコップで砕いたり、朝まで徹夜で散歩したり、相手のことを考えずに自分の支離滅裂な理論を喋る倒したりなど双極性障害的な動きも見られる。
 夕飯のシチューに猫の餌をサラっと入れたり(自分も奥さんもこれを食べる)、子宮断面図でオナニーを始めたり、妻が注文した胎教DVDをコッソリ捨てたり……とにかく異常な行動をシレっとやってのける。

誰か医者に連れて行けば良かったんだけどねえ。

 「オレだって、普通じゃ無いことは解ってるし、普通ってものは解ってるつもりだけど、今、自分が普通でいられないっていうか、もうなんだか解らないんだ!」

 彼がこうなったのは、時折現れる、”頭から血を流した日本人の幻影”が日本人がなんなのか?にある。だが、その正体。直接は明かされることはない。だが、間接的には非常に分かりやすく説明してくれるので、ちゃんと観ていれば解るはずだ。
 刺激的な描写は殆ど無く、ほとんどが思わせぶりなだけの映像が続くので、若干退屈なのは否めない。背景の落書きや小物で主人公の置かれた状況を説明することも多く、演出も若干幼稚だ。だが、精神疾患者特有の病状は、とにかく細かく描かれており、それは圧倒的にリアル。

DO”NUT”

 また、TVを観て勝手に腹を立てて自家中毒を起こしているというエピソードを入れているも良い。よくいるでしょ、TVとかネット観て、いちいち腹立ててるヤツ。ああ言う輩ってのは、自分の現状の気にくわなさをそうやって解消しているつもりなんだよね。ジョセフもそうなんだけど、それが逆効果だって事に気がついてないのだ。
 監督はジェイムズ・カーンがキチガイ老人を演じた『グッド・ネイバー』(16)のカスラ・ファラハニ。元々がアートディレクターなので、画作りや細々とした小物の扱いが非常に巧い。精神疾患の病状もしっかりと取材していた様子。しかし、演出はまだまだのようだ。惜しい一本。
これじゃあ、抜けないよ・・・。

枕を手に、寝ている嫁の枕元に佇む

 

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