ウオノエって怖いんだぜ?

あらすじ

新米ジャーナリストのドナは、ある港町で祭りの取材をしていた。カニ喰い競争やら水遊びに興じる子供たちやカップルと田舎ならではの賑やかな祭りだった。ところが昼にさしかかり、祭のテンションを上がってきた頃、アイスを食べていたデブ女に酷い水ぶくれが発生。よほど苦痛を伴っているのか大声で助けを呼び救急車で搬送される。それを皮切りに、次々と体の異常を訴える住民たち。水ぶくれが発現したら最後、体が崩壊して死亡してしまうのだ。ドナは、この異常事態の取材を始めるのだが、瞬く間に病院はパニックに陥り、町のそこかしこに死体の山が築かれていくのであった。

浮かれているのは最初だけ!

あっという間に地獄絵図。たった12時間で町が壊滅していきます。

病院がお祭り状態

感想

いい加減ファウンドフッテージ映画にはうんざりしている向きは多いだろう。ブレブレ画面、見切れまくりのキャラクタ群・・あぁ!もう!うんざり!
そもそもPOVってのは、生々しさや臨場感を拡張するべく使われる手法のはずだった。それを生かした「Rec」(1作目のみ)や「Evidence」のような作品が生み出された一方で、クソつまらない「パラノーマル・アクティビティ」やそのフォロワーがヒットしてしまったおかげで「ド素人がビデオカメラ回して、フィルムだけを残して行方不明になった」という安価で一本調子な作品で埋め尽くされてしまい、本来の目的から逸脱したジャンルになってしまっていた。

「第9地区」や「Chronicle」が良い例なのだが、ファウンドフッテージは素人のビデオカメラにこだわる必要は無く、監視カメラやTV画像、車載カメラなどをつなぎ合わせるとこのジャンルは途端にギミックまみれの娯楽作となる。提示された映像を自分なりの解釈で映像を頭の中でつなぎ合わせる必要があるからだ。

この「The Bay」は、ある町で起こった惨劇を描いた作品だが、前出のようにあらゆる異なった視聴覚データを連続で提示し「ただ見せる」ではなく「観客自身で映像をつなぎ合わせる」事で全容を理解させるという手法の一歩前進したファウンドフッテージものである。


あらゆる視点でのデータが次々と提示される

メインはドナのリポートとなるが、その隙間には病院とCDCのSkype動画、海上で魚の大量死を目撃する観光客、体調を崩し病院に行ったものの混雑する待合室で途方に暮れる少女の携帯動画、パトカーの車載画像、病院の医師が撮影した臨床用ビデオ動画、大量ステロイドを不法投棄する養鶏所に忍び込んだ環境保護団体の盗撮画像等々、様々な動画を駆使して惨劇を輪郭から詳細部分まで表現していく。

ポスターにもあるとおり、ウオノエ科の生物がカギを握っている。このウオノエ科、魚の舌を食べて、自らをその食べた舌の代わりにさせて寄生するというなかなかの強者で、まあ彼らが成長促進ステロイドで元気一杯になるのも無理はない!って感じですね。それからですね、CDCがまーーーったく役に立たないんですね、しまいにゃググってたりしますから。


"そっち"の描写もなかなかキツイ。

状況を積み上げて行き原因がわかったときにはすでに大パニックという定番の流れですが、原因が判明するまでのフッテージの積み重ねは非常にサスペンスフル。さらにパニック終盤のグロ表現が結構キツく、僕みたいな輩には非常に美味しい内容になっています。さらに喜ばしいことに本作はモンスターも宇宙人も幽霊もゾンビも一切登場しない。この映画で描かれるのは、致死性の寄生虫感染パニックだ。つまり、本作はファンタジーな事象は一切発生しない。だから「ありそうな話」としても恐怖感も十分に感じることができる。さらに極端に細分化されたフッテージはそれぞれ別の個人の視点であるため「コンテイジョン」的な群像劇(っていうほどでもないけど)になっている。後味も得も言われぬ不安感を残すあたり「コンテイジョン」っぽい。


悪いヤツ。ウオノエさん。舌を乗っ取るとのことですが、今回は舌だけではすまないのだ!

それに、ウオノエが大量に画面を埋め尽くすってキツイでしょ?


後半は死体ばっかり!どっさり!

あ、言い忘れましたが、監督はバリー・レビンソン。レインマンやディスクロージャなどヒット多数の職人監督。そんな彼が撮ったんだから、飽きられつつあるジャンルでも手堅い内容になるに決まってるよね−!安心してオススメできる良作。

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