方々で話題になっているとおり、イライジャ・ウッド主演のリメイク版「マニアック」の日本劇場公開版はR15指定であるため、ゴア描写にボカシおよび黒潰し処理が施されています。
そもそもオリジナル版マニアックは、キチガイ殺人鬼が女性の頭皮を剥ぐという衝撃的な行為がウリの作品であったはず。しかし、リメイク版ではその頭皮剥ぎにボカシがかけられて劇場公開されるという自体になってしまいました。一体何が起きたのでしょう?憶測で騒いでいても仕方が無いので経緯を配給のコムストックグループさんに質問してみました。

僕が質問したのは3点

1.映画「マニアック」日本公開版はゴアシーンにボカシ処理は入っているのでしょうか?
2.ボカシ処理されているとすれば、どのシーンでしょうか?
3.R15指定のために行った処理なのでしょうか?そうだとすれば
  ボカシ処理を行ってまでレーティングを下げたのはどのような判断なのでしょうか?

コムストック・グループさんからの返答は翌日夕方にはありました。大変素早くて良かった。

1.映画「マニアック」日本公開版はゴアシーンにボカシ処理は入っているのでしょうか?
<回答>

日本公開版は修正(ぼかし処理)を行っています。
本作はもともと、監督及びプロデューサーが
世界各国のセンサーシップにのっとって修正が必要になることを理解しており
その国の状況に従い、修正が認められています。
本作は劇場公開にあたり
R18指定でも、条件が付きましたので(一部、修正の指導あり)
関係者で、R15指定での劇場公開が検討されました。
※その理由につきましては、「3」で回答させて頂きます。

2.ボカシ処理されているとすれば、どのシーンでしょうか?
<回答>
約6か所あります。
主に、頭皮をはぐシーンや内臓をえぐるシーンです。

3.R15指定のために行った処理なのでしょうか?そうだとすればボカシ処理を行ってまでレーティングを下げたのはどのような判断なのでしょうか?
<回答>
まず、ご質問「1」で回答したことがベースにあり
●本作がホラーというジャンルを超えて、異形なるラブストーリーの秀作であること
●主演が「ロード・オブ・ザ・リング」等で人気のあるイライジャ・ウッドであること
を踏まえ
お客様を18歳以上に限定せず、少しでも多くの皆さんに本作をご覧頂きたい思いから、
配給会社、劇場、その他関係者で協議し、R15指定にする判断を致しました。

よりによって「マニアック」という映画に対してR15での公開を決定したことは、かなり微妙な判断ではないか?っていうか、それ間違ってるでしょ?っと考えた方々、ごもっともです。オリジナル版がもつ性格を考えると、多少の修正はやむなしとしてもR18で公開し極力残酷描写と見せつけるべきと、確かに僕も思います。特に質問3については「なんというチャラい理由なのか!」っとお思いの方もいますでしょう。
その反面、「マニアック」は上映劇場も少なく(R18の「死霊のはらわた」より少ないです)やはり動員数を気にすると、どうしてもこのような判断に行きついてしまうのも僕は理解できます。
「それで集客が見込めるのか?」という疑問については、僕は何とも言えません。ただ、その道のプロが協議した結果ですから、そういうことなのでしょう。(本作に”恋愛もの”という側面を配給会社が見いだしたことについて疑問を感じる人もいると思いますが、実際見てみるとジョー・スピネルならさておき、イライジャ・ウッドがコロコロした目で徘徊している画を見れば・・まぁわかりますよ。)
しかし、この現状では無修正版を期待していたコアユーザは、ライトユーザ獲得のために自分たちはパージされたと感じてしまうのも事実です。

そして今回、さらに話をややこしくさせているのが、ボカシ修正。これは映倫の範囲なのでなんとも言えません。ただ、毎度の事ながらイマイチ規定がはっきりしないのがもどかしい。そしてタチの悪いことに、そのボカシが演出の一部のように見えてしまうボカシ方なので、気がつかない人は気がつかないかもしれない。これについては、「今後、ユーザには判らないように修正してしまおう」という企みが潜んでいるのでは?と危惧する意見もTwitter上では幾つか見かけました。

でも頭の中で自家中毒を起こして文句ばかりを言ってもしかたがない。それに今回はもう「やっちゃった」事だから今更どうしようも無い。
だから、僕は今後のことを考え、以下のお願いをすることにしました。

・修正が入っている場合は、必ず修正した旨と修正した箇所をユーザに告知する
・集客目的で規制版公開がなされた場合は、ソフト化の際、極力規制が解除された
 R18またはアンレイデッド版のリリースを検討する

というわけで、以下2点、追加で質問しました。

4.修正が入ったことについて、告知がなされていないようにみえますがこれはなぜでしょうか?
  また、今後、R15とした理由および修正に関しまして公式サイトで告知の予定はありますか?

5.今回はR15での劇場公開となりましたが、ソフト化の際、R18版での
  リリース検討・予定はございますか?

これについては、まだ回答が来ていないので、回答あり次第更新します。
回答にちて追記
コムストック・グループさんから明確な回答をいただいたのですが、非公開として欲しいとの要請がありました。
そのため大変心苦しいのですが、僕とコムセック・グループさんとの信頼に関わるのでここに回答を書くことは出来ません。
しかし、コムセック・グループさんは配給会社としてベストなやり方と模索していることは間違いです。「マニアック」およびコムストック・グループさんからリリースされる映画については、ユーザが一番危惧しているような事態へ発展する可能性は低いと僕は感じています。

ここからは僕の持論になります。誰かを責めたり擁護したりするつもりありません。3歳児のころから30年以上、黙々とホラー映画ばかりを見続けてきたオッサンの単なる意見です。

ホラー映画って、ホラーというジャンルがもつ単純な娯楽性に反して色々面倒なんです。配給会社も"かなり面倒なもの"という認識も強いようで、あまりに大きく批判すれば、企業として”めんどうなものは扱わない”として離れてしまうし、放っておいても今回のように検閲でも自主規制でも無いのに、あたかも検閲・自主規制の結果であるように見えてしまう場合もある。
今回のやりとりを通じて、修正が施された状態でリリースするのは配給会社も「是」とはしていないことは感じ取れました。しかし、映倫の指導が近年厳しくなっているのも間違いなく、配給会社も悩んでいるのではないかと思います。そして一般興行に載せるためにレーティングの調整もかなり悩ましいことだなんだと。

はっきり言って30年前とは違って、残酷描写についておおっぴらにできる時代は無くなっていると思います。残念ですがこれは事実です。しかし日本は、BBCFやら悪夢のビデオナスティー、MPAAよりは緩い部分もあり、ある意味まだマシといえる面もあります。CEROのように作品ごとに特別扱いはしないし・・。でも、いつそうなってもおかしくはない状態なのも確かです。

黙っていても始まらないので、何か得体の知れない事態が起こっている感じたら、自分の目で何が起きているのかちゃんと確かめ、その上でやれることはやっていくしかないと思います。
問題発覚時から僕とやりとりを続けていたshox呪のtinkerさんは、「日本の表現規制問題について外国のホラーファンに広く問いたい」と、全文英語のエントリを上げています。ゆくゆくはカルフン&アジャから直接意見を聞き出したいという思いもあるようです。
※今時点で、海外ホラー老舗サイト、shock till you drop、Bloody Disgusting、dread centralに取り上げられています。これは快挙ですよ。

今回の件で配給会社や映倫をただ罵倒するのは簡単です。でも、問題はそれでは解決できないことは確かなのです。

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