オシャレなお家で、久しぶりにパコろうとした三十路夫婦が変態さんにボッコボコ!

作品データ

Home Sweet Home / 2013年 加・仏 / 監督・脚本 デヴィッド・モレット / 出演 メーガン・フェフラン,アダム・マクドナルド,ショーン・ベンソン

レビュー

   
楽しい外食から家に戻ってきたフランクとサラ。「メシも食ったし、さあ、後はシャワーを浴びてパコるだけ!」「今日は子供も預けてきたし〜!」と浮かれまくりだ。サラは学生時代に来ていたチアガールのユニホームを出してノリノリでシャワーを浴び、旦那もダッサいオールディーズを聴きながらリビングで踊り狂う。すると家の中に隠れていたキチガイマスクの変態野郎がノッソリ登場、調子に乗っているフランクのゴルフクラブでフルスイング!バチコーーーンッ!!かくして恐怖の夜が始まったのである。
   

ほぼ台詞なしで進行する静寂のファニー・ゲーム。フランクの頭皮をカッターでメリメリを引っぺがしたり、サラは何度もナイロン袋で窒息させられそうになったり、地味なイジメが続くのみで特筆すべきゴア描写もないのだが、もっさりした展開にイチイチ描写が小洒落ているのが苛々を加速させて、なかなか印象深い映画になっている。

冒頭は変態マスクが二人を逃がさないための下準備をする様が淡々と描かれる。警報装置に細工をし窓枠を固定、証拠を残さないため髪の毛はワセリンで撫で付け、特殊清掃員のような全身防護服で作業。家の中を丁寧に物色しサラの口紅を愛でたり、おもむろにリビングでくつろいでみたりと「これから変態が面白い事やりますよ」アピールがなんと20分!これはちょっと様子がおかしいぞ!そして、次にやってくるのは「あとはパコるだけ」の若いわけでもないハンパな年頃の夫婦の「あー、久しぶりにパコれるわー」というリビドーが沸々と煮えたぎる様。これがまた20分。舞台となる家が真っ白で無機質でドロリとした雰囲気にそぐわなず、なんだかとても観ていて気持ちが悪い。白いベッドや床が夫婦の飼い猫の足跡が血に染まるわざとらしい演出も監督のドヤ顔がちらつく。
   

我慢するだけさせておいて、ゴルフクラブでフルスイングはかなりの爽快。そしてその一発以降、準備万全に挑んだ行為であるため、余裕しゃくしゃくで予定外のことが全く起きない無双状態であり、変態マスクの押せ押せムード一色となる。警備会社のオッサンがぶらりとやってこようが、サラが隙を突いて拘束を解き、家の中を逃げ回っても全て想定済み。寝室のオイルヒータに縛り付けたサラがヒーヒーいうのを赤ちゃん用トランシーバにリビングからモニタリングしつつマッタリしけこむ変態マスク。家の中にはチアグッズやアメフトのメットなんかが飾られていて、夫婦が典型的ジョックス野郎であることが見て取れ、まったく同情心が沸かないのもアツい。変態がなぜこの夫婦を狙ったのかは明確にはならないが推して知るべしである。
   

軽いオチ的なものはあるが、本当に何も起きず最後まで余裕過ぎる変態マスクがジョックス夫婦をぶっ壊す様が描かれ、非常に胸糞良い話である。

監督はゾンビとの雪中の攻防をハードに描いた「フェーズ7」(mutants)を撮ったデヴィッド・モレット。「フェーズ7」では、派手なゾンビとの攻防よりも彼氏がゾンビ化していくのをただなすすべも無く見守る女の暗いエピソードに重きを置いていた。やろうと思えばトコトンやれるプロットをワザと気怠く撮るのは、彼の特徴なのだろう。こいつ、相当相当暗い学生時代を送ってたんじゃないかなぁ・・。しかし、そんな根暗な雰囲気を醸す作風とは裏腹に本作はセルフプロデュースでよっぽど嬉しかったのか、名前をデヴィッド・モーリーからデヴィッド・モレットと名前を変えてしまっている。

余談だが「フェーズ7」(原題:mutants)と「PHASE 7 フェーズ7」(原題:Phase7)は別の映画であるので、気をつけたし。

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