「お前が喰われろよ!」「やだよ!お前が!!」「じゃあl俺が!」「どうぞ!どうぞ!」

作品データ

2013年 米 監督:ラリー・フェッセンデン 出演:マーク・マーゴリス、ダニエル・ゾヴァット、ボニー・デニソン、クリス・コンロイ

レビュー

6人の高校生が湖に遊びに行ったならば、そこは人食い魚がいる恐ろしい湖でした!UMA系のよくあるお話。本作で酷い目に遭うのは冒険好きのジョニー、旅行の映画を撮ろうとカメラを携帯カメラ回しまくるジーク、マッチョなマットとサイモンの兄弟、女の子のキティとデビーだ。
彼らはジョニーが小さい頃よく遊んでいた湖、ブラック・レイクに遊びに来た。早速大はしゃぎボートで繰り出だそうとする彼らをジョニーの知り合いで湖付近に住んでいるパークさんが咎める
「湖を汚すな!リスペクトしろ!何人も水に入ることは許さんぞ!」
ただならぬ雰囲気に怪訝になるがジョニーは「湖をボートで渡るだけですよ!」と説明する。しかし、ジョニー自身も何か知ってるようだ。そしてなぜか、自分のお守りを密かに思いを寄せるキティに手渡そうとするも、断られてしまう。微妙な雰囲気のまま湖に繰り出す一行。
そして、湖にど真ん中に来たとき、マット、サイモンが悪乗りをはじめる。花火をガンガンたきまくり、ビールをガブガブ。そして「これは、泳ぐしかねえべ!」っと服を脱ぎはじめ、ジャブーン!女の子も後に続く。
  
「うわ、やべぇわ・・」そんな顔でジョニーは同級生を見つめる。そこへ忍び寄る巨大魚。魚の存在に気がついた入水組は、急ぎボートに戻り、オールで応戦。しかし、オールは一本は破壊され魚の背中に突き刺さった状態となって、立ち往生することになる。

ドタバタで腕を噛まれたデビーは出血多量で敢えなく死亡。テンパった一行が思いついた脱出法は、デビーの死体を囮に、魚の気を引きその間に手でヒーコラ漕ぐことだった。
  
しかし、そんな計画上手くいくはずも無く、デビーを食らった魚を「まだまだ足りねぇ!」とボートにガシガシ体当たりをはじめる。苦し紛れに持参したお菓子を湖に撒き餌ををしたり(アホか)するも全く効果が無い。そして一行は決断をする・・・。
「仕方ない、誰かを犠牲にして、その間に手こぎだ!誰が犠牲になるかは多数決だな!」
・・・バカですね!
そんなわけで、「コイツなら大丈夫」という意味不明の理由で最初の犠牲者として選ばれてしまうジョニー。ジョニーは素直に水に飛び込むのだが・・・。
  

登場人物全員がクズという映画はなかなか無い。誰か一人自己犠牲に熱いヤツや、常識的な考えを持ったヤツがいるものだが、本作には一人も存在しない。

中盤以降の「生け贄投票」から始まる、Truth ot Dare状態の勝負は、彼らが誰一人としてまともで無いことをあぶり出す。
  

ジークはキモいからヤダだの、キティとお前は付き合ってる風だが、実は兄貴と浮気してやがるんだぜ?だのそもそも湖に連れてきたのだれだよ?だれだよ手こぎボートが良いって行ったのは?等々、上っ面だけは仲良くしていた連中が、命の危機にさらされエゴの赴くままにあら探しをし、
誰かを囮に!->お前だ!ドボーン!->テメー一生恨んでやるからな!ゴボゴボ!->誰かを囮に!
これが淡々と繰り返される様がとにかく楽しい。さらにボートに縁に捕まり助けを求める友人の指を足でグリグリ潰したりするベタな描写には、高校時代、暗い青春を送っていた筆者も大興奮である。この暴露閉鎖地獄の中、どのクズが生き残るのか?という楽しみもあり、「ただ喰われる」に特化しがちな低予算UMA映画とは一戦を画する作品。

人食い魚の造形は、巨大ナマズと言ったところ。CGではなく、アニマトリニクスで動かしており、動作はもっさりしているが、尾ひれ+突き刺さったオールをいわゆるジョーズの背びれのような扱いにして、緩慢な動作に緊張感を与えている。ギョロリギョロリと動く目もなかなか可愛い。
血はさほど出ないのだが、噛み傷やゴリゴリという咀嚼音が効果的。ゴアよりもガキがいがみあうストリーの方が生々しくエグい。
  

やたら巧いなと思ったら監督はラリー・フェッセンデン。役者はもちろんプロデューサーとしてもそこいらで名を見かける才人である。監督としても地球温暖化ファンタジーホラー「The Last Winter」で高評価を得て、日本でも先頃公開された「ABCs of Death」の続編の監督に抜擢されている。
先日紹介した「The Battery」にもちょい役で出演。デキの良いホラー作品には必ず言って良いほど顔を出している。
  

さらに、ダーレン・アロノフスキー作品の常連、マーク・マーゴリスも少しだけ出演(例の警告ジジイ役)し、アクの強い芝居を見せている

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