”観るものを不安定にさせる”とし、劇場公開を取りやめ急遽DVD・VODリリースのみになったという作品。

作品データ

2013年 米・チリ 監督:セヴァスチャン・シルバ 出演:ジュノ・テンプル、エミリー・ブロウニング、マイケルセラ

レビュー

はっきりって、この映画はヤバい。

ナショナル・ジオグラフィックの番組宣伝のような、チリの緑豊かな渓谷や丘が映し出されるオープニングをぼーっと眺めていると、突然画面が暗転、マイケル・セラ演じるキモ男ブリンクの気持ち悪いハミングととともに”Magic Magic”とタイトルが瞬間表示。残像しか見えない(このエントリのアイキャッチ画像がそれだ)。これだけで、なにかただならぬ雰囲気。

南米チリに従兄弟のサラを訪ね旅行に行くことになったアリシア。豆腐メンタルのアリシアは、生まれて初めての海外旅行で情緒不安定になってしまう。そこでサラは、自分の恋人と友人達を連れ立って、アリシアを元気づけようと小旅行に出かけることにする。ところが、サラの友達は一癖も二癖もある連中だった。彼らの自由すぎる態度は、アリシアのストレスを増幅させ、彼女の心が壊していく・・。

  
ブリンクは黙々とエロ話をつづけ、さらに人前でもこっそりオナニーをしたりする変態だ。

  
道中思いつきで拾った犬を「五月蠅いからやっぱり捨てよう」と道路に置き去りにしたり、基本的にちょっと”オカシイ”友達一行。これが原因でアリシアは犬の幻覚に悩まされることになる。

 
サラもアリシアを連れ出しておいて、「追試で学校に行かなきゃ!」と面識のない連中の中にアリシアを置き去りに。

 
サラの女友達バーバラは、兎に角言うことがキツイ上、無神経でボリボリとお菓子を食う音など癪に障る行動ばかりする。

 
唯一、まともなのはサラの恋人だが、彼が遊びでアリシアにかけた催眠術が最悪の結果に。

 
ストレスで壊れたアリシアは自らの股間を(パンツ脱いで)寝ているブリンクの顔面に擦りつけたり、大量の睡眠薬を服用し海に飛び込むなど奇行に走り始める。事態を深刻に受け止め始めた一行は、アリシアを「地元の医者」(奇術師)に連れて行くのだが・・。

最後の最後まで何が起こるわけでも無く、ただ、落ち着かない気分にさせられる映画。冒頭のサブリミナルっぽいタイトル表示から始まり、回転円盤を画面一杯に淡々と写し、残像で画面が歪むよう仕掛けや、無意味な幾何学模様を画面のあちこちに入れ込んだり、なにか心理的に良くないモノを魅せられている感覚。


よく見ないとわからないのだが、壁紙やソファの柄がゆっくりと歪むように蠢いたりする。

常に情緒不安定で内気で何考えているかサッパリ判らない女の子アリシア「キラー・ジョー」で、マシュー・マコノヒーにネットリと視姦される少女役が強烈だったジュノ・テンプルが演じている。

男からグラスを手渡されたとき、何気なしで服の袖で飲み口を拭いたり、髪へのほんの少しの接触にビクビクしたり神経質で繊細なキャラを前面に出す一方、催眠術でエロダンスを突然踊り出したり表情がコロコロと変わってとにかく楽しい。海外では、物語後半にかけてのの精神衰弱芝居は「ローズマリーの赤ちゃん」のミア・ファローまで引き合いに出され高評価を得ている。その上シャワーシーンでは乳も出すなどファン感涙ものである。

そして、スコピルのノー天気なキャラとは打って変わって、友人と会話しながら密かにブランケットの中でシコっていたり、エロ替え歌を熱唱するキモいエロ男に扮しているマイケル・セラ。その終始卑屈なニヤけ顔は一見マイケル・セラとは気がつかないほどのハマりっぷりである。強烈な描写も意外なオチも何も用意されていないにも関わらず、一度観たら忘れられない作品だ。

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