穴神様を信仰する村のインモラルっぷりが楽しい## 作品データ
2013年 アメリカ
監督:チャド·クローフォード·キンクル
出演:ジーン・ブリッジャーズ、ローレン・アシュリー・カーター、ショーン・ヤング
あらすじ
エイダの住む村は穴神(The Pit)を信仰していた。
「穴神は全てを与え、その代わりに取る」……穴神は村人へあらゆるものを与える存在。しかし、定期的に生け贄を与える必要があった。生け贄となるのは、村に住む穴神に選ばれた人間(陶芸家)が無意識のうちに作る顔壺(Jug Face)に似た村人。エイダは陶芸家ドワイの家を訪ねた時に自分の顔の壺が作られていることを知ってしまう。とっさに壺を持ち出し森に隠すエイダ。しかしエイダには、自分が生け贄として選ばれるに値する心当たりがあった・・。
↑真ん中の乳首マンがボーディ君。
エイダが家に帰ると、両親が村人ボーディと結合の契約を結んだことを知る。村では両親が決めた相手と”結合”して子をつくる風習があるのだ。しかしエイダには秘密の恋人がおり、さらに悪いことに妊娠の兆候が・・・。下着に赤い絵の具を付け、生理と偽り結合の日を送らせようと画策するも大して効果はない。鬱々とした結合の日の朝、友達のクリスティと河原で洗濯をしていると、突然エイダは謎の発作を起こし卒倒する。気がつくとエイダはズタズタに引き裂かれ穴神の穴に落ちていた。穴神は、欲する生け贄を捧げられるまで、村人を次々に生け贄にしていくのだ。エイダは村を見捨て逃亡を企てるのだが・・・。
レビュー
輸入DVD、PPV購入派には高評価を得ていた作品。
その良質な内容であるにも関わらず、レンタル・国内盤がメインのホラー映画好きには完全スルーされてしまいそうなあまりに残念なタイトルであったため、紹介することにした。
異様な風習を持つ村を舞台に、生け贄となる運命から逃れようとする女の子エイダの物語。この手の作品では大抵、純朴な女の子が絶望的な運命から逃れるというのが大筋となる。しかし、本作の主人公のエイダは、純朴ではない。それどころか、人に言えない恋人相手に青姦をキメ、その不貞が原因で自らが生け贄に選ばれたという理由を知りながらも、その事実を隠蔽。さらに"結合"相手があまりにブサイクなので、穴神の代弁者である陶芸家と結託して偽物の顔壺を作り、”結合”相手を抹殺を企てたりするドス黒少女だ。
そもそも年イチで穴神への供物として住民の首を掻き切り、村の年頃の女子に本人の望まぬ選んだ相手と”結合”させ子作りを強制させるなど村自体が真っ黒なので、エイダの身勝手な行為が妙に納得できてしまうのが面白い。そりゃあ、「オマエは明日、コイツとパコって子作りをするのだ!」と言われたら嫌に決まってんだろと。だが、エイダのその身勝手な行動は、穴神様を怒らせ住民の体も心もズタズタに切り裂いてていく。
低予算である故、派手な見せ場は殆ど無いが、金が無い故に舞台が限定され、かえって閉鎖的な村でエイダが追い詰められていく様が良く描かれいる。エイダにウッカリ恋をしてしまったゆえ、巻き込まれていく陶芸家ドワイの半ば人生をあきらめた絶望感も素晴らしい。
反抗するエイダに容赦なく根性焼を喰らわす冷徹な母親を演じるのは、ブレード・ランナー」のレイチェル役で有名なショーン・ヤング。
そして、父親はラリー・フェッセンデン。最近のインディペンデントホラー映画には必ずといって良いほど顔を出す男だ。彼は日本での露出は殆ど無く知名度も低い。日本公開された唯一の出演作品は「サプライズ」なのだが、冒頭でぶっ殺される不憫なオッサンの役。彼は監督としても活動中で、本サイトで紹介した「Beneath」の監督でもある。
↑左:フェッセンデン、右:ヤング
また、主人公エイダと陶芸家ドワイの2人は「ザ・ウーマン」で狂った父親とその娘を演じていた2人だ。こちらはプロデューサのラッキー・マッキー繋がりであろう。
本作は、いわばインディホラー畑の連中が寄ってたかって作った穴神さまの祟り映画なのである。俄然オススメしたい作品。タイトルにダマされず、レンタルでもいいので楽しんで欲しい。