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ゴシックロマンを軽く叩いて壊してみました。

レビュー

“ホラー映画なんて、低予算の適当な映画かファウンドフッテージだと思ってんだろ?でもなあ、そもそもホラーってそういんじゃないんだよねぇ“ と意気込んで古典的な幽霊と貴婦人というゴシックロマンに手を出したギレルモ・デル・トロ。小道具や衣装にやたらとこだわる彼にはおあつらえの仕事だなあ・・と思い気軽に見てみたら、あろう事か、従来のゴシックホラーをドギツイ描写でぶっ壊しに掛かった意欲作だった。若干ネタバレ気味なので、以降は鑑賞後にどうぞ。

舞台は20世紀初頭。アメリカ人実業家カーターの娘、イーディスは小説家志望。だが彼女が書くのは恋愛小説でなく幽霊譚だ。それは彼女が、幼い頃に母を亡くした夜に母親の幽霊が現れ「クリムゾン・ビークに気をつけなさい」謎の警告を受けて以来、幽霊を見ることができるようになったからだった。そんなイーディスの前に一人の男が現れる。バロネットであり奇妙な発明家でおもあるトーマス・シャープだ。彼はイーディスの父に自身の発明品を売り込むが、トーマスの前歴を怪しんだイーディスの父はトーマスを門前払いする。しかし、トマスの不思議な魅力に惹かれるイーディスだった。そんな折、カーターが謎の死を遂げる。悲しみに暮れるイーディスはトーマスとの結婚を決意。彼の住むイギリスへと移住する。
しかし、トマスの棲む屋敷は赤土鉱山に立つ老朽化が激しい不気味な雰囲気をもっていた。さらにはトマスの姉ルーシルも思わせぶりな行動が目立つ。そしてイーディスは、この屋敷に住み着く幽霊の存在に気がつき、この屋敷とトマス、ルーシル姉弟になにか秘密があるのではないかと疑い始める。しかし、彼女はまだ知るよしもなかった。この地が「クリムゾン・ピーク」と呼ばれていることに。

Profondo Rosso

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身分違いの恋愛、姉弟のインモラルな関係、不気味な幽霊。どこを切ってもゴシック。呆れるほどのゴシックロマン。だが、必要以上に赤い。その赤は、赤土の色にはとても見えず、完全に血液色だ。幽霊すら赤い。通常幽霊というと半透明で白や青の光を利用した表現になることが多い。しかし、本作では赤。赤と黒の闇だ。加えてその容姿が腐乱した状態とも言える程度には崩れているため、完全にズル剥け死体である。その代わり、背景を白と青と緑で染め上げて赤のコントラストを爆上げしているのもエグい。

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↑ズル剥けである

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↑これは違う映画のズル剥け

この時点で普通のゴシックから逸脱しているのだが、加えて猟奇殺人と犯人捜しの要素を入れ込んだのだ。

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どうしてくれようか、これ。見る人は絶対に連想してしまうでは無いか。ゴシックジャッロなのか、いや、もともとジャッロにはゴシック要素はあったかもしれない。
でも、黒手袋を見せられたらそれはもう完全にアレである。ああ、なるほど古典に現代風スラッシャーを入れ込んだハイブリッドゴシックを作りたかったんだなあと。

↓アレ

The Gruesome Towsome

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インモラル姉弟もなんだか、トム・ヒドルストンの変態顔のせいか非常に気持ち悪いまとまりを見せる。姉弟でセックスする描写はないのだが、よりによって手コキシーンがある。こんなんだったら普通にセックスしてくれてた方がマシだ。後半のジェシカ・チャスティンの狂人芝居も印象深い。この2人の印象が強すぎて、ミア・ワスコウスカが手堅い芝居を見せているのに殆ど印象に残らないのが残念だ。しかし、ウチの嫁さん曰く「ミレイの絵、そのままだったね!」とのこと。「あー、ラファエル前派観に行ったなあ、どんなんだっけなあ」と思って調べたら完コピだった。すげえ。
cap00291K6k6kreomin_2016-1月-09

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