『Can’t Kill This』:レビュー ぶっ殺して下さい!生きる事に飽きました。

Josephine Scandi and Bill Hutchens in Fuck You Immortality (2019)

ジョーを殺せ!

 2人のヴィーガンヒッピー、トニーとケイシーは1976年の夏の日を忘れられずにいた。ヒッピーコミューンでジョーと出会ったからだ。彼はいつも笑顔だったが、憂いを帯びた雰囲気をもち、時折、カミソリを飲みこみ血塗れになるなど、体を張ったマジックを披露する不思議な男だった。

 ある日突然ジョーはコミューンから姿を消し、2人とって幻の男となっていた。しかし、彼らが老後生活を送っていたある日、新聞で巨大イノシシを狩った凄腕ハンターの一人としてジョーの姿を見つける。しかもあの頃と歳一つ変わらない風貌!!

 “あ!ジョーだ!もう一度彼に会いたい!”

 トニーとケイシーはジョーに会うべく、ハンターたちの元を訪れる。だが、彼ら曰く「ジョーはイノシシに食われて死んだ」と言い死体の写真を見せる。「折角会えると思ったのに!」途方に暮れる2人。ところが調べてみれば、ジョーは第二次世界大戦を戦った兵士でもあり、パックマンのワールドチャンピオンでもあり、忍者映画のスターでもあった。
「あれ?もしかして、ジョーって歳をとらないし、死なないんじゃね?」

 事実に気がついた2人の前に、ジョーが姿を現す。「やあ、久しぶり!そうさ!俺は不死なのさ!でもって、もう生きるのが飽き飽きしているワケよ。そんなわけで殺してくれないか?」

彼がいつも憂いを帯びているのは、生きることに飽きたからだったのだ!そして

「もちろん!君がそう言うのなら!!」

トニーとケイシーは、様々な方法で彼を殺そうとするが、彼に彼を殺すことはできない。どうせ死なないのなら楽しむしかない!とヒッピー仲間やジョーの元彼も集い、酒を飲み、カラオケに興じる。しかし、楽しい一時を過ごしても、やはりジョーは死を望むのであった。そこで彼らは“不死は呪い”と考え、知り合いの呪術師に望みを託そうとするが……。

永遠に生きるとは?

 前半がジョー探し、後半がジョー殺しの2部構成となっているが、やはり面白いのは後半のジョー殺しの部分だろう。あらゆる手段を用いて、ジョーを破壊しようとする様はゴア描写好きの、ゴア欲を十分に満たしてくれる。しかし、残念なのは映画の大半は、“ジョー探し”に当てられていることだ。たしかにジョー探しの部分は退屈ではない。田舎ハンター達の典型的なヒルビリーっぷり、映画プロデューサーや忍者映画でジョーの恋人役だった女優のステロタイプな振る舞いは、十分コメディとして楽しめる。しかしながら、クドいのだ。これだったら後半の“ジョーぶっ殺し祭り”に力を入れて欲しかったなと。

 とはいえ、本来のテーマは「永遠に生きるとは?」という部分に着地するので映画本来の作りとしては正しい。ジョーは最終的に死ぬ事が出来る様になっても、なかなか死ぬ事が出来ない。なぜならトニーやケイシーと楽しく過ごした想い出があるからだ。

「生きていることは楽しい。でも、ずっとは嫌だな」

そりゃ誰だってそうだろう。本作はそんなシンプルなジレンマを楽しいジョークとゴア描写で描いているのだ。そして、本作のオリジナルタイトルは『Fuck You Immortality』だ。

 「永遠に行きたいですか?」と問われたならば、うーん。150年くらいは生きたいような気がするけど、やっぱりある程度生きたら死にたいなぁと俺は思う。死ぬ直前になったら、そりゃ「やっぱ死にたくないや」と思うだろうけどさ。あ、そうそう往年のホラーファンはギニーピッグ3『戦慄!死なない男』を思い出すでしょう……でも、あそこまで変な映画では無いです。結構ちゃんとしてます。

原題:Can’t Kill This(aka.Fuck You Immortality ) 2019年 イタリア、フランス 81分(IMDB
3/5