Suspense

『Getaway』:ヒリビリーキラーに飽きましたか?

 週末を湖畔の別荘で過ごす予定のタマラ。友人マディとブルックは先乗りして既に休みを満喫しているらしい。急ぎ車を走らせる彼女であったが、途中、ガス欠になり立ち往生。「こりゃツイてないなあ」と途方に暮れていたところに現れたのは、ヒゲとメガネの2人組みの青年。嫌らしい目つきでタマラを見る彼ら。しかし、あっさりとガソリンを分けてくれるのであった。

『エスケープ・ルーム』 レビュー:陰惨な死と無縁な脱出ゲーム

Taylor Russell in Escape Room (2019)

解くか死ぬか。それだけだ。

 「脱出ゲーム?ああ、またか……」日本公開のアナウンスも無いし、海外評も凡庸。「テイキング・デボラ・ローガン」の監督といえども、「脱出ゲーム映画は『ソウ』でもうお腹いっぱいだわ」とスルーしていた作品。しれっと日本公開が決定し、試写嬢をいただいたので、ぶらりと足を運んで観てみたら、これがなかなか面白い。ごめん、俺が悪かったよ……。

Tyler Labine, Jay Ellis, Logan Miller, and Taylor Russell in Escape Room (2019)
なかなか捻った部屋が登場する。苦痛や人体破壊はないが、致死率は高い。

 6人の使い捨てキャラクターが数々のパズル部屋から、制限時間以内に脱出を試みるだけの話だ。脱出できなければ、もちろん死ぬ。しかし、その死はアッサリしたもので、人体が過剰に破壊されることもないし、苦痛も大して伴わない。(死ぬから苦しいことは苦しいのだが)そして全ての部屋から無事脱出できた暁には大金を手にできる。ツイストは一切無し。「命を無駄にしているから思い知らせてやる」だの「ヒントはやるから、考察はお前らでやれよな」と言った構図も記号も無い。 驚くほどシンプルなプロット。
  褒めてんのか、貶してんのか判らなくなってきたけど、「この映画楽しい?」と聞かれれば、僕は「楽しいよ」と答える。例えばね『ソウ』なんか観てると、最初のゲームが一番面白いでしょう?目玉のやら、腹を掻っ捌いて鍵を取り出せだの、体を切り落として重さを競えだのと。ところが後半になると変なツイストをかまそうとして、ゲームがどうでも良くなってしまう。『キューブ』もそうなんだけど、最初の罠と遊びのインパクトを活用することなく、「ほら。人間って、”アレ”でしょ?」という如何にもな着地点にむけて、急速に「遊び」の要素が縮小されてしまう。でも、これは決して悪いことではない。ずっと同じような脱出ゲームでは観客は飽きてしまうし、ヒネリも何も無い映画は作り手としても作家性の一つくらいは入れこみたいと思うものだからだ。その証拠に、この2作品の評価は(少なくとも一作目は)高い。
 ただ『ソウ』の最初のゲーム、『キューブ』の様な遊び……これらをずっと観てみたいと思ったことはないだろうか?それが『エスケープ・ルーム』なのだ。色々とギミックを凝らした部屋が次々登場し、飽きずに楽しめるから驚きだ。どんな部屋かはキモになるので書きませんが、残酷描写に拘らない創意工夫って大事だなあ・・・。

あくまで軽く

Logan Miller in Escape Room (2019)
苦痛の表現も最小限

 本当にツイストが無いのか?と言わればある。使い捨てキャラといえども、6人の個性付けには意味があるし、劇中登場する何気ない言葉が、ひょんな事に活用されていたり、ちょっとしたイタズラ心もある(たとえば脱出ゲームを主催する会社の名前がミノスである等)。しかし大きな意味は無く、物語上必須ではない。残酷描写についても前述のとおり、人体破壊や苦痛を感じる場面は皆無。(実はこれにも意味はアルのだけれども)とにかく軽いのである。これが評価の分かれ目だが、こんな軽さを持つ脱出ゲーム映画は、これまで有りそうで無かった。過剰な残酷描写や作家性を期待しなければ十分楽しめる。ただ、エンディングについては不満が残るかもしれない。海外盤BDでは別エンディングを観ることができる。僕は、この別エンディングの方が好みだ。

原題:Escape Room 2019年 米国 100分(IMDB
2.5/5

「Depraved」レビュー:引き裂かれる心と体

Alex Breaux in Depraved (2019)

ラリー・フェッセンデン流フランケンシュタイン

 インディーズ映画界のハズレ無しプロデューサー兼ディレクター、ラリー・フェッセンデンのフランケンシュタインだ。ただし、本作の主人公はフランケンシュタイ博士ではなく、戦争PTSDに悩む元衛生兵ヘンリー(どの戦争か分からない。クソアメリカは戦争しすぎだ)。彼はPTSDからの回復手段として「蘇生術」の研究をしているのだ。ただ”病んで”いるので、その研究は常軌を逸している。ただ死んだ人間を蘇らせるのでは無く、死人をつなぎ合わせて蘇らせることに執着している。何故、それは彼の共同研究者であるポリドリが、その研究を成果を営利利用しようと企んでいるから。戦争や労災でバラバラになった体でも、繋ぎ合わせて蘇生できれば、兵士や労働力に使えるというわけだ。


 物語は実験台にされてしまう青年、アレックスが彼女のルーシーと喧嘩している場面から始まる。アレックスは子供が欲しいと言うルーシーに対し「俺はまだ大学を出たばかりの23だし、ヘッポコだし子供なんて育てられる気がしない」と言う。そんな彼にペンダントをプレゼントして機嫌を取るルーシー。だが、その夜、アレックスはヘンリーとポリドリに殺害されてしまう。

Low Tide

ひと夏の地獄経験。80年代”チョイ悪”子供映画meets『黄金』(48)

 ニュージャージーの海岸沿いの町に住む悪ガキ、アランと弟のピーター、レッド、スミティの4人。彼らは退屈な日々を夜な夜なコソ泥をすることで紛らわせていた。とある夜、盗みに入った屋敷で大量の金貨を発見したピーターは、レッドとスミティに黙って兄のアランと2人で金貨を独り占めしようとする。しかし、所詮彼らは子供。秘密を隠し通せる訳もない。憧れの女性、メアリーの気を引くため、幾枚かの金貨を換金し車を買うなど危ない道を渡り続ける。そして秘密はスミティに知られることに。スミティは「レッドにこのことがばれたらどうする?アイツ、人を刺し殺したこともあるんだぜ?」と2人を脅迫。結局3人で金貨を山分けすることに。だが、ハブられている雰囲気を感じ取ったレッドは、再び盗みを提案。しかし、今度のターゲットはメアリーの家だった。


 本作、何が素晴らしいって、この4人、やたらめったら芝居が巧い。「なんだよ!”未公開残酷映画”という名目なのに、そっちの面白さかよ!」と思われるかも知れないが、とにかく巧い。極端に説明台詞が少ない映画であるにもかかわらず、4人のバックボーンが手に取るように判る。親がブルーカラーであることや、金に困っている訳では無いこと、そして本当は平和に暮らしていたいだけであることも……。もちろんセットアップだけでなく、山場のシーンも見所多数。なかでも、スミティがアラン・ピーター兄弟を脅迫するは最高だ。スミティはこの時、パックのオレンジジュースを飲んでいるのだが、それがまるでタバコのように見える。狡猾なその面構えは、完全に大人の顔なのだ。
 地獄の様な騙し合いの果てにむかえる結末は、観る者の心に切ない残像を残す。本作、あまりのデキの良さに、あの気鋭のディストリビュータ”A24”が即権利を買い取った。

Pledge | プレッジ

ヘイジングという極悪文化をトーチャーポルノに

 大学という場所はやりたい放題できる場所であり、その反面やりたいことがはっきりしていなかったり、所謂コミュ障であったりすると、目標を見失い、孤立し、学生生活はどん詰まりとなる。学生が自殺する理由は大概、そんなどん詰まりが原因だ。とある北関東にある陸の孤島で有名な大学の自殺率が高いのも、それが起因といわれる”つくばシンドローム”(あ、言っちゃった)が理由だったと言われる。一応フォローしておくと、最近は交通の便が良くなったせいか、他の大学と同程度に自殺率は下がっているとのこと。

 『Pledge』は、学生達がお互いに繋がりを持つために重要となるフラタニティ、ソロリティの新人イジメを題材にした、サスペンストーチャーポルノだ。これらグループは、何故か排他的でそのグループに入るためには、殆どイジメともいえる課題乗り越えなければならない……お化け屋敷で一晩過ごせだの、ニワトリと一ヶ月暮らせだの……という所謂、新人イジメ(ヘイジング)だ。

 しかし、本作の主人公はそれ以前の問題で、どこのフラタニティからも”おことわり”されている、キョロ充、デブ、根暗3人組。パーティの時間は嘘を教えられ、無理矢理仲間に入ろうと、寮に乗り込めば”お前らはキメェからダメ”と言われる始末。さて困ったというところに現れたのは、怪しい女。

如何にも相手にされなさそうな3人

「今夜、パーティがあるからきなよ!」

といわれ、ホイホイ付いていく3人。山奥深くの屋敷に辿り着くと、そこは色っぽいネーチャンに、シュッとしたイケメンがワイワイと騒いでいるではないか!場違い感は否めないが、ウェルカムな雰囲気に大はしゃぎの3人。気絶するまで飲み明かした3人にイケメンが「おまえら、いけてんな!ウチのフラタニティに入りなよ!入寮の儀式を今晩やるから、お泊まりの用意してきて!」と爽やかに告げる。

ネズミの死体を生でミキサーにかけたペーストを頬張る

 これまたホイホイとお泊まりグッズをそろえて、ルンルン笑顔で夜やってきた3人を待ち受けていたのは、壮絶なゼロサムヘイジングゲームだった……・

 大筋は女性に誘惑された男が酷い目に遭うというのは、トーチャーポルノの王道を築いた『ホステル』(06)と同じ。しかし素直なトーチャーポルノではなく、ある程度のツイストが効いた作品だ。実はホスト側にも、それなりに事情がありヘイジングを行っているのだ。これがちょっと創造を超えているので、そこが見所となる。

化膿した焼き印

 拷問描写は焼き印程度であとはナイフによる殺傷程度。それ故、若干のリアリティがある。それよりも、鳥の死骸をミキサーにかけたものを飲ませるシーンが最高にブルータル。吐き気満載で描かれる。

バケツの中にはハム太郎がはいっており、それを火で炙っております。

 そういえばパーティのサントラにSURVIVEの「Hourglass」が使われていました。『ザ・ゲスト』でも使われている曲だ。ちなみにSURVIVEのメンバーであるカイル・ディクソンは『ストレンジャー・シングス』のサントラも担当している。言わば80sサウンド職人である。さらに『ストレンジャー・シングス』のOP曲は『オンリー・ゴッド』の「Wanna Fight」と似ている似ていないでNMEが騒いでいたことを思い出した。NMEのクセにNew Retroの時流をガン無視した記事にゲンナリした想い出の曲だ。

 (2019年4月22日鑑賞 ★★★☆☆)