Backcountry poster

熊が豪快に食事をする映画です。

作品データ

2014年 カナダ
監督:アダム·マクドナルド
出演:ミッシー·ペレグリン 、 エリック·バルフォー 、 ニコラス·キャンベル

レビュー

熊が人を襲う映画は洋画邦画問わず大量に存在する。いずれもやたらでかくて強い熊が人間を蹴散らす爽快な映画だ。どの作品も、殺人鬼を熊に置きかえただけで“獣”としての恐ろしさを描けているとは言えない。「グリズリー」などはその最たる例。三毛別羆事件を描いた小説「羆嵐」の影響を受け熊の特性は取り込まれている作品も多く見られるが、”ケモノ”が人間をどのように扱うのか?を描いた作品はあまりないのが実際の所。
「グリズリーマン」。熊を近接撮影する危険な活動を行っていたグリズリー保護活動家ティモシー・トレッドウェルの愛称で、彼自身が生涯を通して撮影したドキュメンタリー映画のタイトルでもある。彼はガールフレンドとともに熊に喰われるという壮絶な最期を遂げたが、その最期も音声は録音されていた。この音声はネット上に流出し、非常に話題となったこともある。
「Backcountry」は、このグリズリーマンの壮絶な最期の部分だけを拝借。最近の熊対策手法をとりこみつつ、自信過剰なアウトドアマンと素人の女が森の中で熊に美味しくムシャムシャされるお話である。

自称ベテランアウトドアマン、アレックス。彼は弁護士の彼女ジェンと週末を大自然の中で過ごすためにカナダのブラックフットにやってきた。公園入り口で森林警備員から地図の携帯を勧められるも「俺の庭だから地図なんていらねぇよ」と自身満々のアレックス。ひっきりなしに掛かってくるジェンの携帯をこっそり車に放置。楽しくカヌーで川下りを楽しむ。カヌーを引き上げる時にアレックスは足をカヌーの下敷きにして怪我をするも、それでも余裕の面構えでキャンプ設営。そこにキャンプインスラクターのブレッドがやってきてジェンと仲良く話していると、アレックスは焼き餅を焼く。アレックス態度に気を悪くしたブレッドは立ち去り、再び二人きりになる。当然ジェンはご機嫌斜め。翌朝、ふくれっ面でトレッキングしているとカヌーで潰した足の指の痛みが悪化。痛みを堪えつつアレックスはあることに気がつく。熊の気配があるのだ。巨大な足跡。巣の痕跡。糞。ジェンには知らせず帰り道を急ぐも、気がつくと川とは反対側の山を登っていた。そう、迷ったのだ。延泊せざるを得なくなったが、その夜、ついに熊がその正体を現す。テントに進入してきた熊に食い殺されるアレックス。残されたジェンは、ひとりで熊と対決することになるのであった。

トレッドウェルは、こんなお馬鹿さんではなかったと信じたいが、とにかく熊がムシャムシャと人間を食い散らかす映画は他に類を見ない。しかも食い散らかしっぷりがとんでもなくリアル。ネットで転がっている死体画像そのまんま。よくもまぁ、こんな描写を実際にとりいれる決断をしたもんだ。このやたらリアルな描写はそこそこ評判のようで、今後、このパターンが増えていくと考えられる。日本ではレーティングが若干心配であるが、聞いたところによると「人が人を食べる」描写がNGなのであって、「野生生物が人を食べる」描写は問題無いらしい。日本での劇場公開・ソフト化は当分先になりそう。その時はどのような判断が成されるか見物である。

熊の食事シーンも面白いが、アレックスの自分への過信が次々と裏目っていく様も楽しい。彼女が男と話していれば無駄な嫉妬に駆られ、ウッカリ唯一の武器である斧をその辺に放置、荷物を落とし足の指を潰し、自信満々で帰路につけば逆方向、「彼女に自然に触れて欲しい」という身勝手な思いから携帯電話を捨て、森林管理員に勧められた地図も受け取らない。どこがアウトドアマンなのか。ただのええカッコしいじゃないか?と、観客を散々イライラさせてくれる。しかし、これが熊のお食事シーンのカタルシスを確固たるものにするのだ。

監督のアダム・マクドナルドは、もともと役者。本作が長編デビューとなる。森の中でキャンプ中に「オープン・ウォータ」の話をしているときに本作のプロットを思いついたとのこと。また彼は映画祭で本作の上映後、このプロットはPOVスタイルに向いているのでは?という問いに対して、彼はこう述べている。

「POVは死んだ」

DVDが出るそうです!


Cinemathejuryさん、いつも情報ありがとうございます!

キャプチャスライド

クリックで変わります

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事