Gnow (aka.Apartment 212) | ノウ

2017年 アメリカ
監督: Haylar Garcia
->imdb
脳筋 vs 吸血子鬼

あらすじ

ジェニファーは、暴力夫から逃れて、都会で独り暮らしを始める。だが、彼女の選んだアパートはクセのある住人ばかりだった。タバコをプカプカしながら、住人の品定めをする大家のクローデット、お節介焼きだが色々面倒を見てくれるラリー、マリファナ吸いまくって、フラフラしているフィジー……。隣人のステラに至っては服も肌もボロボロで何やら怪しい病気か虫に寄生されているように見えた。しかも毎晩シクシク泣いている声が通風口から響き渡り、ジェニファーの安眠を妨害する。

どうみてヤバイ病気のステラ

そんな環境に戸惑う彼女だが、独り立ちのスタートからくじけるわけには行かない。だが、就職活動は巧くまわらず、元旦那に居場所も突き止められ脅迫されるという、先が見えない状態に、意気消沈するジェニファー。今日もさめざめと泣いているステラの声を聞き、落ち込むもの同士で元気づけてやろうと彼女の部屋をノックする。その瞬間、爆発音と共にショットガンで頭をブチ抜いたステラが窓から飛び出してくる。彼女は自殺したのだ。

ショットガンで頭をぶち抜いたステラ

翌日、ステラの遺品を整理するラリーから、小さな子鬼が乗った奇妙な箱を受け取る。その日から彼女の異変が始まる。夜は寝付けず、気がつけば体中に何かに刺されたような傷跡が……。

痒そうに見えるが、実際は痛いらしい

レビュー

見るからにヤバい箱

呪われた箱を手にしたことで、災厄が降りかかるという定番の”呪いグッズ”もの。察しの通り、ジェニファーにちょっかいを出しているのは、箱の上に乗った子鬼。こいつが夜な夜な動き出し、彼女の血をチューチュー吸っているのが原因なのだが、それが判明するまで過程がやたらと長い。最初は「虫かな?」と殺虫剤をばらなき、「ウチのアパートがそんなに汚ねぇっていうのか?」という大家と大喧嘩しながら害虫駆除を呼ぶ。お肌ボロボロで見た目がシャブ中にしかみえない彼女にラリーが、シャブ立ち自助グループの案内を手渡したり……。非常にスローな展開でイライラさせられるが、キャラクター各々が軽快でコメディタッチに、かつモンタージュでそれぞれのエピソードが流れるため退屈しないのだ。このノリのお陰で、いつの間にかイライラから心地よさに変わっていく。なかでもボロボロになっていくジェニファーを元気づけようと必死になるラリーのノーテンキさが最高だ。

やったら良い人のラリー、しかし彼も災厄に巻き込まれることに……。

どう見てもシャブのビタミン不足にしかみえない。

あんたね、薬、止めなさいよと大家

こりゃ、"刺された"とか”ひっかいた”じゃなくて"噛み後ね……"と言われる

ジェニファーは、高校時代ソフトボールの強打者として活躍していたものの、脳味噌筋肉なアメフト男に引っかかり、人生の選択を誤ったという設定。夫も相当”アレ”な性格として描かれるが、ジェニファー本人も基本的に脳筋野郎なので、全てにおいて考え方が雑。突然、体中に湿疹や虫刺されができたなら”まず病院に行って見てもらえよ”と。(アメリカは医療保険がないと、診察料がアホみたいに高いって話はさておき)それに、あの箱ね。まず開けてみろと。でも、前述の通り「こいつらアホだし、脳筋だし、ま、いっか」と観ている方は思えてくる。この独特の投げやり感が、本作に他のコメディホラーにはない味を持たせている。
もちろん、子鬼が正体を現してからの展開も脳筋。子鬼をバッドでブン殴り、ディスポーザーで粉砕し、電子レンジにぶっ込む。しかし、それでも倒すことのできない子鬼。それに対し、ジェニファーはある取引を行うことなる。本作の挿入歌「Little Devil」(Lisa Donnelly)の”誰でも心に悪魔がいる、そのことに許しなんて要らない。理由があれば。”という、そのままのオチをどう思うかは、好みが分かれるところだが、久しぶりに笑顔になれるホラー映画を観たような気がする。

オマケ

VOD配信時は、『Apartment 212』だったけど、内容が全く読めないタイトルのせいか、『Gnow』に変更になった模様。

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事