セックスで伝播する呪いのお話
作品データ
2014年 アメリカ
監督:デビッド・ロバート・ミッチェル
出演:マイカ・モンロー、キア・ギルクリスト、オリビア・ルッカルディ
レビュー
セックスを媒介して伝播する呪い。一聴すると非常に馬鹿馬鹿しい設定ゆえ、トンデモ映画を連想する方が多いだろう。しかし、本作は、セックスという異質な手段を巧みに活用した、青春ホラー映画なのだ。
女子大生のジェイは、新しいボーイフレンドのヒューと2人で映画館でデートを楽しんでいた。映画が始まろうとしたその時、ヒューがおもむろに劇場の後ろを指差し
「なあ、あの女、見えるか？」とジェイに問う。
しかし、ヒューの指し示す先には誰もいない。「誰のこと？」ジェイが答えるが早いか、ヒューはジェイを連れて劇場を飛び出す。その夜、2人は車の中でセックスをする。後部座席で事後の余韻を楽しんでいると、突然ヒューはジェイにクロロホルムを嗅がせて気絶させる。目が覚めたジェイは、廃墟ビルの中で車椅子に縛り付けられていた。
「一体何事！？」ヒューを問い詰める彼女。「君にセックスを通じて呪いを移した。この呪いが掛かると、”あいつら”が追ってくる。君は"あいつら"に触れられたら死ぬだろう、次は呪いを移した俺を殺しにくる。だから早く誰かとセックスをして呪いを引きはがせ！」ヒューはそう言うと、ジェイの拘束を解き、逃げるように彼女を自宅まで送り届け、行方をくらます。
翌日、彼女は学校でナイトガウンを着た老婆に遭遇する。言葉を発する訳でもなく、走る訳でも無い、ただ無言でジワジワと歩きながら近づいてくる。その様子に驚き、妹のケリーのバイト先に逃げ込むが、信じてもらえない。さらにその夜、自宅でキッチンから後ろ手に縛られた女が侵入。家を飛び出し逃げ惑うジェイ。「もしや、呪いは本当なのでは？」誰かとセックスをしなければ逃れることのでき無い恐怖に悶々と苦しむ彼女。その運命はいかに？
かけられた呪いは決して解くことはできない。”呪い”をセックスによって他人になすりつけても、その相手が死んでしまった場合、呪いは自分に戻ってくる。つまりどれだけ呪いを回避してもいつかは自分に戻ってくるのだ。人は常に死に向かっているが、約束された死を回避できるのであれば、何をするだろうか？そう考えると、本作がセックスを何かのメタファーにしたドラッグムービーではない事に気が付く。不幸の手紙なら何処かの誰かに出せばいい、呪われたビデオなら気にくわない友人を騙して見せればいい。しかし、セックスならどうだ？匿名性や感情を隠す事はできない行為で他人に死をなすりつける事はできるのだろうか？
おそらくは日本公開されるので、これ以上の言及は避ける。ただ、ジェンが最終的にとった行動は悲壮なものだ。
ちなみに”あいつら”に触れられるとこんな感じで死にます。
