Tempus Tormentum | テンピス・トーメンタム

悪夢は壊れた映像の羅列なのかもしれないが、それをそのまま映画にしたら、ただの壊れた映画になってしまったという作品

あらすじ

 寂れた町のモーテルに泊まる男。男は旅の途中なのか、どこかから家の途中なのかは分からない。ベッドでうたた寝していると、突如、部屋に侵入してきた奇っ怪なマスクの3人組に襲われ、正体不明の薬物を注射される。意識朦朧となりながらも、モーテルから逃げ出す男であったが、何処に逃げても3人組が追いかけてくる。教会の神父も、助けを求めて逃げ込んだ民家の夫婦も、怪しいクラブの客も全員、男にグルのようだ。一体、男に何が起こったというのか。

レビュー

 「一体、男になにがおこったというのか?」と書いてみたものの、”何も起こってない”まま終わる話である
 冒頭、タイプライターの文字で「死ねない苦しみが口から絶望を吐き出す」とメッセージが提示されることから、おそらく本作は「死」の苦痛、あるいは、『終わらない苦しみ』というタイトルの通り、苦痛が終わらない地獄を表現したかったのかも知れないが、完全に失敗している。(ちなみに、“男“の役名は「Mr.Mouse」だ。「Mouth」(口)とかけているという拙い感じが辛い。)

 

気色の悪いマスクの男にいくら追い立てられようが、原色のドギツイ照明で画面を染め上げようが、冷淡な面持ちの人物が無表情で迫ってこようが、それはただ「なんだか気味が悪い」だけで、死や苦しみは全く感じないのだ。全ての場面が冗長でリズムも無く、観ている行為そのものが苦痛という始末。皮肉なことに、その点では”苦しみ”の表現はできている。せめてトリップするほどの目まぐるしさがあればなあと。
 監督のジェームズ・リューキーは10年前に『Aegri Somnia』という長編を撮っているが、予告だけでも分かるとおり、彼はデビッド・リンチになりたかったのかもしれない。

 しかし、誰もがリンチになれるわけでは無い。意味の無い映像の羅列は大抵……というか殆どの場合、巧く機能せず、本当に羅列でしか無くなってしまう。だが、それでも、実験映画好きにはオススメしたい映画。出来損ないの退屈な映画なんだけど、10年近く金を貯めて、壊れた映画を撮りきる根性。偉いなあって思います。

 ただ唯一、本作で血圧が上がる画面がある。それは、男が鉄のゲージ入れられ、マッスルカーで引きずり回される場面だ。これが凄く良い!ゲージがアスファルトに擦れて、バチバチバチ!っと火花が散る。ここだけは、ものすごい熱気だ!ほんと良いんだ。この場面だけは!!

 もしかしたら、彼は、こういうスタントアクション映画を作った方が良いのかも知れないなあ。

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