『FREAK』:ハイテンションな森の仲間が大暴れ!

 『クライモリ』こと『Wrong Turn』、フランスの悪名高き名作『Ogroff』、典型的スラッシャー『The Final Terror』等々の中で迷ってしまったキャピキャピの若者たちが殺人鬼だのバケモノが出てきてぶっ殺される、所謂”Backwoods Slasher ”

 正直なところ、この手の映画には皆、飽き飽きしているのではないだろうか?想像できる最大限の下劣なキラーが考えうる限り残虐な殺人を行う。飽き飽きしてるとはいえ、70年代から半世紀以上、連綿と続いてきた定番なので、もはや伝統芸能。

 この伝統芸能に求められるのは「衝動」。「衝動」こそがBackwoods Slasherの面白さと言える。しかし、この「衝動」というのが難しい。『クライモリ』がいい例だ。

 『クライモリ』は1作目以外は全く面白くない。いくつか美味しい殺人シーンはあるが、映画としての出来はどれも今一歩である。なぜか?続編は1作目のプロットをそのまま使った焼き直し映画でしかなく「俺はこういうものが撮りたいんだ!」という衝動が感じられないからだ。

 裏を返せば、チープなメイクであろうが、拙い演出であろうが「衝動」さえあれば面白くなる。格好の例がこの『FREAK』。

 『FREAK』のストーリーはとてもシンプル。ハイテンションな森のバケモノが若者をブチ殺すだけだ。このバケモノというのが、とんでもなく雑でショボい。しかし、やたらと威勢がいい。『悪魔の赤ちゃん』や『核変異体クリーポゾイド』を彷彿とさせる熱量がある。ゴリゴリと首をナイフで切り落とす、頭を真っ二つにカチ割る等、超ゴアな殺人シーンも明らかなフェイク感があるが、その圧倒的なテンションの高さに手汗をかいてしまうほど。

 役者の芝居、演出はギリギリ及第点。ゴア描写だけにこだわらず、犠牲になる5人の若者のバックボーンもしっかりと描き、バケモノの正体に一捻り咥えているーーと言っても、バレバレだけどもーーのも好感触だ。

 監督のLucky Cerrutiは、プロダクションDead Visionで細々とスラッシャー映画を作りつづけている。ちなみにDead Visionも非常に謎が多く、フェイクボディを黙々とチェーンソーで切り刻んだり、腹話術人形を使って役者に一人芝居をさせて人形バトルを演じさせたりして”no budget special effects”と豪語する、非常に難儀な映画を世に送り出している。

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