Awoken

 眠れないというのは、かなり辛い。布団の中で悶々とし続けていると「死んだほうがマシなんじゃないだろか?」と思うほどだ。理由は人それぞれだろうが、大体は睡眠薬で万事解決である。ところが、睡眠薬が効かない病気があるというではないか。
 Fatal Familial Insomnia(致死性家族性不眠症)略してFFI。この映画で初めて知りました。ざっくり言うと、脳幹から出る”寝とけ!”という命令を体が受け付けなくなるそうで、分類的には異常プリオンによる認知症的な病気だそうな。最終的には気が狂って死ぬそうで、「なんと恐ろしい病気か!」と震え上がりましたよ。さて本作は、不眠症と悪魔憑依をくっつけたお話です。

末期です。いい顔をしていらっしゃる。

 主人公の医学生カーラさんの弟ブレイク君は先のFFIを発症しており、すでに末期。2人の母もFFIでこの世を去り、父親も既に他界。唯一の家族であるブレイクを助けようとカーラはFFI研究者である、かつ恩師でもあるロバート教授に助けを求める。
 ブレイク教授はロバート教授の地下研究病棟に移すことを提案。カーラはそれに同意する。研究病棟には同じFFI患者が2人。カーラのクラスメート、アンジェラと元彼パットも治療に協力することとなった。
 何をするわけでもなく経過観察を続ける彼らであったが、カーラが偶然、本棚の後ろから発見したビデオテープを発見する。そのテープには恐ろしい、彼女の母がこの研究病棟で異様な治療を受けていたことが記録されていた。

 聖書をビリビリと破き、目から血が噴き出し、大暴れする母の姿。驚くまもなく、病室のベッドの上ではブレイクが聖書を破きはじめる。母に何があったのか?ブレイクに何が起ころうとしているのか?混乱するカーラ。そんな中、患者の一人がが首つり自殺を遂げてしまう。研究は中止することになり、地下から出ようとカーラたちだが、エレベータは停止し、外に出る術を失ってしまう……。

 ”悪魔にとりつかれたから不眠になる”と思って観てたら実は……という軽くヒネった作り。悪魔が”眠”と”起”の狭間に存在するという発想が面白い。たしかに、眠りに落ちるとき、意識を意識していないなと。あ、意味判りませんか?”眠”と”起”の間て確かに判らんでしょ?そこに目を付けたんですね。うまいこと考えたもんです。FFIの人は、常にこの合間に居る。だから見えているものが違うんだろうと。しかし、本作、せっかくこの良いアイディアを無駄にしてしまっている。ストーリーの骨子がFFIではなく悪魔がどうしてカーラを狙ったのか?のみに着目してしまっているのだ。whyは確かに重要だが、せっかく”眠”と”起”の狭間というSFのような空間を利用しない手はないはずなのに、whyに引っ張られすぎている。オカルトなんだからもっと、そういうのは雑で良いんだよ!そういうのはよお!と思ってしまいました。

目の回りに血糊をつけただけかもしれませんが、心意気は買う

 監督曰く『エルム街の悪夢』へのアンチテーゼと言っているようですが、いやぁ、そういうんじゃないだろ!!もっとオリジナリティを出せよ!と言ってあげたい。でも、まぶたを剥ぎ取ったり、電線を口に突っ込んだりと地味ながらもブルータルな描写は良かったです。

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