5感をテーマに6人の監督が競作したホラーオムニバス。ペットセメタリーの赤子(ミコ・ヒューズ)が大きくなって監督やってます。

作品データ

2013年 アメリカ
監督:エリック・イングランド(嗅覚)、ミコ・ヒューズ(視覚)、ニック・エヴァーハート(味覚)、エミリー・ハギンズ(触覚)、ジェシー・ホランド、アンディ・ミットン(聴覚)

レビュー

嗅覚

  
うだつの上がらない男セスの元に、ある朝、女セールスマンが訪ねてくる。「あなたは体臭がダメなのよ。この特性の香水って体臭を変えれば、仕事も女もウハウハよ!今回はお試しってことで、タダであげるから使うといいわ!」と出所の怪しい香水を手渡される。半信半疑で香水を振りかけてみたら、行く先々では女にモテモテ、会社の査定は何故か上がり放題!”こりゃラッキー!”とガンガン香水を振りまくるセスであったが・・・。
典型的な”トワイライト・ゾーン”もの。いわゆる"世にも奇妙な物語"である。察しの通り、香水は強烈な副作用を伴う。その副作用というのが・・おそらくは寿命と引き替えということなのだろうが・・”体が腐る”のである。真っ黒いゲロをウェーウェー、ゲボゲボ吐きながら錯乱するセスは見物だが、そんな必要ないのに全ての出来事を一日に詰め込んでいるため非常に煩雑としたストーリー運びで5本のウチ一番デキが悪い。さらに悪いことに一番長い。正直、無い方がマシのエピソードなのだが、5感がテーマである以上入れざるを得なかった。そんな作品。

視覚

  
眼科医のトムは、"視覚経験"を抽出できる特殊な器具で患者の素行をコレクションしていた。抽出した経験は目薬として貯蔵しておき、自ら投薬することで患者の素行チェックや経験を追体験しているのだ。ある日患者のエイミーが顔に痣を作って来院、彼女の視覚経験を確認したところ、夫からDVを受けていることが判明する。トムはエイミーの夫を改心させるべく、とっておきの恐怖視覚体験を経験させることを決心するが・・・。
「ペット・セメタリー」や「マーキュリー・ライジング」での芝居が高評価だったミコ・ヒューズの初監督作品。脚本の担当しているがとても良くまとまった小品。ホントに小品で尺も一番短く、記憶にも残らない。トホホ。
こいつが→こうである
憎い!イケメンが憎い!!

触覚

  
山奥で交通事故を起こしてしまった一家。怪我で動けない両親に変わって助けを求めて山中を彷徨うのは盲目の幼い息子だった。しかし、彼が足を踏み入れたのは異常殺人鬼の縄張りであった。
唯一、スーパーナチュラル的な要素が無い純粋なサスペンス作品。トラバサミだらけの森を歩かせたり、盲目であることを利用した演出もしっかりと取り入れ、基本を押さえた手堅いエピソード。死体もエグい。

味覚

  
凄腕ハッカーのアーロンは特別オファーを受け、"Watershed社"へ面接に行くことになった。社のボス、レイシーから詳しく説明を受けるが、内容が気に喰わずオファーを断ってしまう。するとレイシーは豹変し彼に文字通り”噛みつく”のだった。
比較的大人しいエピソードが続いたが、ここからいきなり強烈なゴアシーン炸裂する。どっかで見たような器具が笑い所。本エピソードで”Watershed社”が今までのエピソードの黒幕的存在であることが明かされる。そして、ここでレイシーがアーロンに依頼した”ある楽曲を拡散させる”仕事が最終エピソードの聴覚へと繋がっていく。

聴覚

  
ある映画製作プロダクションチームに届けられたビデオ。それは聞いた者を殺すという歌の研究ビデオであった。彼らはその歌の存在と謎を突き止めようとするのだが・・。

彼らが見る白黒ビデオのゴアシーンは最高だ。自らのはらわたを素手で書き出し、髪の毛を千切ってはなげ、ちぎっては投げ・・。また研究者たちが被験者に無理矢理楽曲を弾かせようとし、ゲロや鼻血を出しながら無理矢理曲を奏でる様もなかなか楽しい。

全評

「V/H/S」や「The ABCs of Death」の影響か、"その手の監督"が集まって競作するのが流行のようだ。本作は駆け出しの駆け出しのような監督ばかりで代表作を持たな面子がほとんど。しかし(嗅覚)を除いて、いずれもフルサイズでも問題が無いレベル。特に「Yellowbrickroad(邦題:リクイッド・ウッズ 樹海)」の監督2人組が撮った(聴覚)のデキは秀逸。POVなので好みがわかれるが"人を殺す歌"の世界拡散へ向けて事態が深刻化していく様を編集スタジオ内のみの描写で見事に描いている。またゴアシーンは白黒ビデオの中だけとなっており、それゆえ薄気味悪さが際立つ。ほかにもPOVにも関わらず画面2分割したりと様々な工夫が盛り込まれたすばらしい短編だ。
ちなみに唯一のダメエピソード(嗅覚)のエリック・イングランドは「Madison County」というブタのかぶり物をした殺人鬼が登場するヒルビリーホラーを作っているが、こちらも冗長で退屈なホラーであった。

それぞれのエピソードは(触覚)を除いて、登場人物がクロスオーバーしており、明確な言及は無いが全てが"Watershed社"に繋がる。このやり口はメインフレームを持たないオムニバスとしては古風なもの。しかし、完成度は高い。”Watershed社”が一体何をしているのか?が説明せず、謎のままブチリと物語を切ってしまうのも潔い。しかし、上司に逆らった部下は喰われるというのは、なかなかはっちゃけた会社だなあ。Watershedという名前からも”関わるとそこが人生の分水嶺”になるような会社なんだろうね。それにしてもワンレンボディコンの上司が人食い専用器具を顔面につけているビジュアルは扇情的だなあ。

最近のホラーアンソロジー映画が好きな向きにはオススメ。
  
  

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