たぎる復讐心とノイズ
作品データ
2015年 アメリカ
監督:Adam Egypt Mortimer
出演:Spencer Breslin, Grace Phipps, Sierra McCormick, Noah Segan
レビュー
中高生時代、クソ不良野郎に意味も無くブン殴られたことはありませんか？俺、あるんだよねえ。虐められていた訳では無いんだけど、たまたま何か腹が立ったのか弱そうだったのか、ちょっかい出されたことが何度か。不良相手に喧嘩しても得することは無いので、やられても我慢するほか無かったわけだケド、その時に感じる発散できない悶々とした怒りって独特だなあと。そう、耳障りなノイズミュージックに近い感触。「ああ、あいつ死ねば良いのになあ！」という、あのビキビキ感。わかるかなあ・・・。そのビキビキ感をこのSome Kind of Hateは、ブラックメタルとノイズにのせて、復讐の名の下に血の華を咲かせる作品だ。
リンカーンは、ブラックメタル好きのゴス兄ちゃん。学校では1人飯しながらサタニックかイラストをノートに書きつらねるキモいやつ。今日も1人でイラストを描いていると「オメー、キモいんだよ！」と、クラスメイトに因縁を付けられ殴られる。怒りにまかせてフォークを顔面に突き刺すしてしまうリンカーン。斯くして彼は、砂漠のど真ん中にある更生施設"Mind's Eye Academy"行きとなるのでした。
問題児ばかりを集めた施設で平和に過ごせるはずもなく、苛めっ子に目を付けられてしまうリンカーン。しかし、悪い事ばかりでは無い。彼がいじけてタバコを吸っている所に現れた少女、ケイトリンとブラックメタルで意気投合。親密な仲となる。ケイトリンに「あんた、いい加減に抵抗しなさいよ」とはっぱをかられたリンカーンは、いじめられっ子を殴り返すが、逆襲されボッコボコにされてしまう。ところが、翌朝、いじめっ子の1人、ウィリーの自殺死体が発見される。首をカミソリで切り裂いたのだ。腕には「イジメっこ(Bully)」と文字が刻まれていた。リンカーンはラッキーといわんばかりにゴキゲンになるが、彼は不気味な少女の影に付きまとわれ始める。そして、ウィリーの自殺現場を掃除していると、壁に「あなたのためにやったのよ！モイラより」と血文字の落書きを発見する。
モイラとは何者なのか？友人アイザック、ケイトリンと共にモイラについて調べたところ、彼女は施設でイジメに遭い自殺した少女であることが判明する。
モイラはリンカーンの鬱屈した感情に呼び覚まされたのだ！次々とリンカーンを虐めていた連中を殺していくモイラ。リンカーンは彼女の暴走を止めることは出来るのか？
イジメ復讐ものだが、単純な復讐劇とはなっておらず、なかなかヒネリが聴いている。リンカーンはブラックメタル好きのただの暗い男。うだつの上がらない彼が能動的に何かをすることは殆ど無く、見るに見かねた亡霊モイラが暴走するという筋立てだ。しかし、モイラ自身の目的もある。それは自分を自殺に追い込んだ連中への復讐だ。勘の良い方なら気がつくだろうが、彼女を自殺には恐るべき真相が隠されているのである。
また、モイラの特殊な能力が面白い。モイラが犠牲者に直接危害は加えることない。ではどうやって、犠牲者を殺害するのか？モイラは自傷を他人へ反映させることができるのだ。つまり、自分の首を掻き切れば、相手の首が切れる。相手に反撃されてブン殴られれば、殴った本人が傷つくと言った具合。この方法で相手を死に至らしめるのだ。逆に彼女に傷を負わせたい場合は、自傷しなければならない。終盤、自らの体を切り裂きながら、施設内を闊歩し死体の山を築く様は爽快かつカッコイイ！切り裂くだけでなく、指をひん曲げ、腕をへし折りながら迫る姿は凄まじい迫力である。そして、そんな化け物モイラとの勝ち目が無い戦いを前に、リンカーンが男を磨いていく姿もなかなかアガる。冒頭に書いたとおり、激しいノイズとブラックメタルBGMでイジメシーンからゴアシーンまで埋め尽くされ、神経を逆なでするような効果を上げていることも注目したい。アナログメイクでの脳漿飛び散りや関節折りなどゴア好きにも十分オススメできる良作。
あ、そうそう。こういった作品には必ずと言って良いほど顔を出す、ノア・セガン。今回も良いポジションで出演しています。
