I Am Not a Serial Killer | アイ・アム・ノット・ア・シリアルキラー

2016年 アメリカ
監督:Billy O'Brien
出演: Christopher Lloyd, Laura Fraser, Max Records
->imdb

あらすじ

気が狂っていることを自覚している人は、気が狂っていないといえるのではないか?自分が危ういラインに立っていることを認識しつつも、そのラインを踏み越えないよう必死に止まっているとしたら、ラインを超えた人間はどう見えるのだろうか?そんなことを思わず考えてしまう映画だ。
葬儀屋の息子、ジョン・ウェイン・クリーヴァは15歳。彼はカウンセラーからソシオパス(社会病質者)と診断されていた。火遊び、お漏らし、動物虐待、死体への異常な興味、他人を思いやる気持ちの欠如、そして連続殺人鬼への関心……。完璧なまでの殺人鬼予備軍だ。

カーチャンも心配です

カーチャンも心配です

そんなジョンの住む街で謎の連続殺人事件が発生する。葬儀屋に運ばれてきた遺体を見れば、内臓または体の一部が欠けているではないか!一体どんなやつが何のためにこんな事をしているのだろう?猟奇殺人にジョンは大興奮。
葬儀屋の旨み溢れる

葬儀屋の旨み溢れる

ある日、ジョンはナイフを懐に隠し持った怪しい男を見かける。男の後をついて行くと、ジョンの隣人であるクロウリー爺さんと一緒にワカサギ釣りに出かけていく。人気の無い氷原で一瞬の隙をついてナイフを抜く男。ところがクロウリー爺さんが逆に機敏な動きでナイフをかわすと、逆に男を惨殺。肺を抜き取り喰らうのだった。なんということだ、隣に住む老人が連続殺人鬼だったのだ!(しかも食人鬼!)
今日び、暴力は老人のものなのだ

今日び、暴力は老人のものなのだ

レビュー

ソシオパスvs殺人鬼老人という新しい設定のサスペンス映画。ジョンは心の奥底に眠る暴力性と衝動的な行動を必至に抑え続け「俺はいつか人を殺すのではないだろうか?」と不安に駆られている。
しかし、学校のレポートにBTKキラーでお馴染みのデニス・レダーを題材にし、先生から「普通の子はこんなモノを書かない」と言われても「普通って何さ?」と真っ向勝負う挑み、苛めっ子を相手にしても「俺はソシオパスだから、お前なんてダンボールと同じに見える。お前を開けたら中身はどうなってるんだろうなあ?」と脅すといったどこか吹っ切れた所もある。
一方、殺人鬼のクロウリーは普通の人の良い老人、長年連れ添った奥さんとも仲良く静かに暮らしているのに、なぜか人を殺して喰う。これにはある理由があるのだが、その理由を知ったジョンは、彼の次なる殺人を止めるべく、あらゆる手段で対抗する。(本作のポスターをよーーーーく見てみると気がつくはずだ)

死体に触るの大好き!

死体に触るの大好き!

ミネソタのクソ寒い風景をバックに臓物がカジュアルに扱われる様は16㎜で撮られ、若干荒んだ印象。若き日のクローネンバーグ作品を思い出させる閑散として突き放した映像感覚は、ただでさえ複雑な思春期を自身の問題を抱えながら、孤独な戦いを挑んでいくジョンの姿をより悲壮な印象を与える。物語はジョンの心情そのものを描くことに重きを置いており、青春映画としても側面が大きい。しかし、油断をしていると中盤以降のとんでもないツイストに頭をガツンとやられるだろう。
なかなか凄味がある芝居を見せるC.ロイド

なかなか凄味がある芝居を見せるC.ロイド

殺人鬼、クロウリー爺さんを演じるのはクリストファー・ロイド。老体に鞭打って、非常にアグレッシブな芝居を見せる。ジョンは『かいじゅうたちのいるところ』でマックス少年を演じたマックス・レコーズ。なかなかのイケメンに成長しているので、女性にも是非オススメしたい作品。
 また、本作はソシオパスのジョンを描いた連作小説の映画化だ。現在刊行されているのは「I Don't Want To Kill You」「The Devil's Only Friend」「Mr. Monster」「Over Your Dead Body」と本作と合わせて5冊。まだまだ続刊されるそうだが、タイトルを見れば判るとおり、ジョンは、ずーっと悩み続けているご様子。日本でも早く翻訳されないかなあ。

ギャラリー

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