Sweetrheart レビュー:キャスト・アウェイ+プレデター?

万能感溢れる主人公

 どこかの海岸。眩い日差しで目覚めたジェン。声を上げて人を探すが、返事は無い。彼女は無人島に漂着したのだ。ふと海岸を見ると人が倒れている。駆け寄って助け起こすと彼は友人のブラッドだった。彼の腹を見るとデカいサンゴがブッスリと突き刺さっている。おもむろにサンゴを引き抜くジェン 。(何故抜いた!?出血して死ぬだろうが!) 息も絶え絶えの彼に「水分補給を!」と森に分け入り椰子の実を手に入れる彼女。しかし、戻るとブラッドは事切れてた 。(当然である) 落ち込んでいても仕方ないとブラッドを埋葬し、島の探索を始めるジェン。 島は一周するのに小一時間とかからない小さな島。 明らかに 人っ子一人いない無人島。だが、森の中で古びたテントやリュックを見つける。誰かが置いていったのだろうか?それとも?
 それはさておき、火をおこし、魚を捕り、食い、寝る。素晴らしいサバイバル知識だ。

 翌朝、目を覚ますと埋葬したブラッドの死体が持ち去られていた。そして食い散らかされた魚の死体。森の隅で見つけた誰かの墓……。ジェンは直感する。
 「何かがいる。そして、この島にいる生き物を喰らっている。」
魚や漂着した仲間の死体で撒き餌をして、彼女はその”生き物”の正体を突き止める。それは浅瀬に空いた巨大穴に棲む、巨大かつ怪力を持つ魚人であった。幾度か魚人とやり合うも「これには勝ち目がない、もう逃げるしか無い」とジェンは思う。しかし、そこに元彼のルーカスとブラッドの彼氏ミアが島に漂着する……。

一点突破型ストーリー

 孤独な無人島生活を難なくこなし、魚人の出現にも臆することなく対処。鬱陶しい元彼や、やたら悲観的な友人などガン無視して、サバイブすることに徹するジェン。いくらでも膨らませることのできるプロットなのに「ジェンのルンルン無人島化け物退治」にのみ焦点を当てる一点突破型ストーリー。ミアとの不仲、ルーカスが持っていた万能ナイフに血痕が付いる等、思わせぶりな伏線が張られるがまったく回収されない。過去に島で生活していた人々についての説明も「ただ魚人に次々と襲われて死んだ」程度。正直、30分くらいで終わりそう話。だが、楽しげなサバイバル生活、見事な水中撮影、そして”死にゲー”に挑むが如く魚人に立ち向かっていくジェンの姿が魅力的。90分間しっかりと楽しませてくれる。 ブラムハウス・ブロダクション製作ということもあり、低予算ながらも確実なプロデュース。ボディースーツとCGがシームレスな魚人が一番の見所だ。今、ボディースーツを使ったクリーチャー映画は貴重。


 そういえば監督のJ.D.ディラッドは、前作 『インフィニット』(Sleight)でも似たような映画作りをしている。青年マジシャンが麻薬ディーラの縄張り争いに巻き込まれるというストーリーだが、青年が何故、麻薬売買に手を染めのか、青年は何故、両親を失ったのか?等々、多々ある要素を膨らますこと無く、”すっげぇテクニックのマジシャン”という部分だけをフィーチャして一点突破ストーリーを構築していた。まだ2作目しか製作していないため、この作風が単に拙いだけなのか、純粋な個性なのか分からないが『Sweetheart』と『インフィニット』から感じる初期衝動は面白い。
 彼の製作スタイルは、リアルサウンド映画部さんに寄稿した記事を読んで貰うと分かるが、ジェイソン・ブラムと相性が良さそうだ。今後が少し楽しみである。

原題:Sweetheart 2019年 アメリカ 82分(IMDB
★3/5

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