ディヴァイド (原題:The Divide) (2011)Director: Xavier Gens Country: Germany | USA | Canada

Synopsis

そう遠くない未来、核戦争が勃発。大混乱の中、ニューヨークの地下シェルターに逃れた9人の男女。
エヴァとその恋人サム、ジョッシュと弟のエイドリアン、その友人のボビー、マリリンと娘のウェンディ、黒人のデブリン、そしてシェルターの持ち主であるミッキー。ぎこちないながらもシェルターで共同生活を始めようとした時、突然、シェルターのドアが破られ防護服を着た武装兵士が乱入、ウェンディを連れ去る。残された8人は武装兵士に皆殺しにされそうになるが、危機一髪、兵士2名を殺し,難を逃れる。

  • 絶望経由地獄行きのご一行とやたらと格好いい防護服の兵士

ジョッシュが殺した兵士のスーツを着込みシェルターから外に出てみると、シェルターは入口から封鎖されていた。迷路のような封鎖空間を抜けると、研究室のような場所にたどり着く。そこでウェンディを初めとする幾人かの子供が頭髪を剃られ、目に絆創膏を張られた無意識の状態でカプセルに閉じ込められているのを発見。驚愕するジョッシュだったが、他の兵士に見つかり、命からがらシェルターに戻る。兵士達は追ってくることはなかったが、シェルターは外から溶接されてしまい、脱出不可能となってしまう。

  • 冒頭の襲撃シーンは圧巻。何をされているかサッパリだが、どうやら被爆治療っぽくもある子供達。

彼らは閉じ込められてしまったのだ。さらに追い打ちをかけるように、自分たちが殺した兵士の死体が腐り、悪臭を放ち始める。不潔で退屈な日々は強烈なストレスとなり彼らを襲う。悪臭に耐えられなくなった彼らは、死体を斧で死体をズタズタに細切れにし、下水に流す。

  • みんなでDVD鑑賞。インモラル生活。楽しい死体解体。

常軌を逸した生活は彼らの精神にゆっくりではあるが確実に影響を与えていった。マリリンは娘を失ったショックからボビーと性的関係を持つようになり、フリーセックスをエヴァにも勧めるが拒絶される。さらにミッキーがダイアルロック付きの隠し部屋に大量の食料と水を隠し持っていることが判明。小競り合いの末、デブリンが銃の暴発で死んでしまう。

キレたジョッシュとボビーは、ミッキーを拷問しダイアルロック番号を聞き出し、なお暴れるミッキーを別室に閉じ込める。大量の水と食料を確保した一行であったが、生活環境は悪化の一方をたどる。今度はデブリンの死体が腐り悪臭を放ち始めたのだ。彼ら自身にも異変が起こり、髪の毛が抜け、歯茎から出血が始まる。マリリンの相手はボビーだけでなくジョッシュも加わった。そしていつからか彼らはマリリンを肉便器のように扱うようになる。

  • ダイヤルキー教えないなら指落としたるで!!!/すっごいセックスもするぜ!

次第に平常心を失っていく一行。やけっぱちのようにセックスにふけるジョッシュとボビー、その生活から抜けるに抜けられないマリリン。一方で冷静さを保とうと努力するエヴァ、サム、エイドリアン。ボコボコにされたミッキーの目の前には元妻の幻影が・・・・。

  • ギリギリでとどまる人、向こう側に行ってしまう人。

具合が悪い、怖い、血が出る、不安だ、臭い、毛が抜ける、でられない、助けて、誰か、吐き気が止まらない、助けて、誰か・・ここから出して・・。

Review

これね、凄く良いです。監督がフロンティアやヒットマンのザヴィエ・ジャンなので、アドレナリンドバドバ系のブッ殺し合いムービーかと思いきや、とても静かで冷徹な絶望に満ちた作品でした。

終末サバイバル映画は、食料や水の枯渇にフォーカスを当てて「ヒャッハーッ!食料をよこせーー!!」という展開が多く観られます。本作でも、たしかに問題にはなるのですが、食料や水は十分なんですね。

じゃぁ、何が問題なのよ?っていうと、「わからない」事なんです。外では何か大変なことになっていて、自分たちもこのままでは酷い死に方をするだろう。でも、本当にそうなのか?もしかして、外に出られたらこれまで通りの世界があるんじゃないのか?自分達の具合が悪いのは、被爆なんかではなく、ただのストレスからくる過労じゃないのか?

だけど、それを知る方法は無い。どうやっても外には出られないし、体の調子は間違いなくおかしい。何がどうして自分達がどうなるのか、誰も先のことなんか解らない。やけっぱちになってセックスをしまくっても、無理して平常心を保っても、ボロボロで傷だらけで意識が朦朧としていても絶望は平等に襲ってくる。

  • だれも「怖い」とは明確に口にしませんが、そう思っていて常に不安に苛まれていることは明確です。

絶望で精神がおかしくなっていく様を分かりやすく冷静に描くのって、僕、凄く難しいと思うんですよね。いきなり完全にトチくるってウンコをブリブリ漏らしながら暴れるだけなら簡単なんですけど、ちょっとしたことの積み重ねで少しずつ少しずつってのは、あざとい芝居になりがちで、なかなかできるモノでは無いような気がします。僕もさすがに気が狂ったことはないので、それが妥当な表現かどうかわかりませんが、今まで観た、それを試みた映画の中でもかなり自然に感じがしました。

クライマックスでは美しい絶望的な世界を観ることができます。ちょっとダニー・ボイルっぽいかなあ。
期待とは違った内容ですが良い意味で裏切られた感じです。フロンティアもそうですが、クセのある幕切れは、彼の持ち味になっていくのでしょう。

また、役者も素晴らしいです。
特にエヴァ役のローレン・ジャーマンが美人過ぎて困る。ホステル2では、土壇場で度胸のある女性を演じていましたが、本作でも、後半にかけてパワフルな芝居を見せてくれます。

  • 前半と後半でかなり見た目が変わってしまいますが、あんた、なんでそんな美人なんだよ。。。彼女を見るだけでも価値がある映画です。

他、大抵の役者さんはブチキレた役ですが、ボビー役のマイケルエクランドが非常に良かったです。彼、後半にとんでもない奇行に走るのですが、それがまたバシッとハマっていてよかった。

  • マジぶっとんでます。意外とセクシーだし、人気がでそうなタイプですが、いかがでしょうか?

仕切り屋で横暴だけど、結構良いヤツというステロタイプな自己中キャラのミッキーを演じているマイケル・ビーンも良かった。彼が最後に見せる顔が何とも言えない!あんなに幸せそうに絶望を受け入れる顔ができる人はいないですよ。

  • 相変わらず渋い芝居です。

上の概要には中盤までのストーリーを書きましたが、実際はもうちょっと細々としたイベントを起こして登場人物のバックボーンもしっかりと描かれています。
この手の作品には珍しく120分近いランニングタイム。さらに非常に静かな作品なのですが、とにかく先読みを許さない展開で、最後までしっかり楽しめます。傑作。
ゴア表現を楽しむ作品ではありませんが、キメるところはしっかりとキメてきます。完全にネタバレになるのでキャプチャーは貼れませんが・・・。

"最後どうなるのか教えてくれ"と良くメールを頂くので、ネタバレ書いておきます
反転させましたので、読みたい人はどうぞ。

*Spoiler*ネタバレ*

マリリンは激しい暴力セックスにより衰弱死、ジョッシュとボビーは精神に異常をきたし、危険を感じたエヴァは、サム、エイドリアン、さらにミッキーの協力を得て、狂った2人を始末しようとする。乱闘の末、混乱したサムは、誤ってエイドリアンを射殺。サムはジョッシュとボビーにリンチされるが、隙をついてエヴァがカンヅメの蓋でボビーの首をかっきり殺害。残されたジョッシュは焼身自殺を図り、シェルターが炎に包まれる。
呆然とするサムとミッキーを置き去りに、エヴァは防護服を着込みトイレを破壊、下水からシェルターを脱出する。シェルターに残されたサムとミッキーは、死を前にして絶望からの解放を感じ、安堵の表情を浮かべながら爆死する。そして地上に戻ったエヴァは、廃墟となり死の灰が降り注ぐニューヨークの街を絶望的な表情で眺めるのだった。

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