ひと夏の地獄経験。80年代”チョイ悪”子供映画meets『黄金』(48)

 ニュージャージーの海岸沿いの町に住む悪ガキ、アランと弟のピーター、レッド、スミティの4人。彼らは退屈な日々を夜な夜なコソ泥をすることで紛らわせていた。とある夜、盗みに入った屋敷で大量の金貨を発見したピーターは、レッドとスミティに黙って兄のアランと2人で金貨を独り占めしようとする。しかし、所詮彼らは子供。秘密を隠し通せる訳もない。憧れの女性、メアリーの気を引くため、幾枚かの金貨を換金し車を買うなど危ない道を渡り続ける。そして秘密はスミティに知られることに。スミティは「レッドにこのことがばれたらどうする?アイツ、人を刺し殺したこともあるんだぜ?」と2人を脅迫。結局3人で金貨を山分けすることに。だが、ハブられている雰囲気を感じ取ったレッドは、再び盗みを提案。しかし、今度のターゲットはメアリーの家だった。


 本作、何が素晴らしいって、この4人、やたらめったら芝居が巧い。「なんだよ!”未公開残酷映画”という名目なのに、そっちの面白さかよ!」と思われるかも知れないが、とにかく巧い。極端に説明台詞が少ない映画であるにもかかわらず、4人のバックボーンが手に取るように判る。親がブルーカラーであることや、金に困っている訳では無いこと、そして本当は平和に暮らしていたいだけであることも……。もちろんセットアップだけでなく、山場のシーンも見所多数。なかでも、スミティがアラン・ピーター兄弟を脅迫するは最高だ。スミティはこの時、パックのオレンジジュースを飲んでいるのだが、それがまるでタバコのように見える。狡猾なその面構えは、完全に大人の顔なのだ。
 地獄の様な騙し合いの果てにむかえる結末は、観る者の心に切ない残像を残す。本作、あまりのデキの良さに、あの気鋭のディストリビュータ”A24”が即権利を買い取った。

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