Taylor Russell in Escape Room (2019)

解くか死ぬか。それだけだ。

 「脱出ゲーム?ああ、またか……」日本公開のアナウンスも無いし、海外評も凡庸。「テイキング・デボラ・ローガン」の監督といえども、「脱出ゲーム映画は『ソウ』でもうお腹いっぱいだわ」とスルーしていた作品。しれっと日本公開が決定し、試写嬢をいただいたので、ぶらりと足を運んで観てみたら、これがなかなか面白い。ごめん、俺が悪かったよ……。

Tyler Labine, Jay Ellis, Logan Miller, and Taylor Russell in Escape Room (2019)
なかなか捻った部屋が登場する。苦痛や人体破壊はないが、致死率は高い。

 6人の使い捨てキャラクターが数々のパズル部屋から、制限時間以内に脱出を試みるだけの話だ。脱出できなければ、もちろん死ぬ。しかし、その死はアッサリしたもので、人体が過剰に破壊されることもないし、苦痛も大して伴わない。(死ぬから苦しいことは苦しいのだが)そして全ての部屋から無事脱出できた暁には大金を手にできる。ツイストは一切無し。「命を無駄にしているから思い知らせてやる」だの「ヒントはやるから、考察はお前らでやれよな」と言った構図も記号も無い。 驚くほどシンプルなプロット。
  褒めてんのか、貶してんのか判らなくなってきたけど、「この映画楽しい?」と聞かれれば、僕は「楽しいよ」と答える。例えばね『ソウ』なんか観てると、最初のゲームが一番面白いでしょう?目玉のやら、腹を掻っ捌いて鍵を取り出せだの、体を切り落として重さを競えだのと。ところが後半になると変なツイストをかまそうとして、ゲームがどうでも良くなってしまう。『キューブ』もそうなんだけど、最初の罠と遊びのインパクトを活用することなく、「ほら。人間って、”アレ”でしょ?」という如何にもな着地点にむけて、急速に「遊び」の要素が縮小されてしまう。でも、これは決して悪いことではない。ずっと同じような脱出ゲームでは観客は飽きてしまうし、ヒネリも何も無い映画は作り手としても作家性の一つくらいは入れこみたいと思うものだからだ。その証拠に、この2作品の評価は(少なくとも一作目は)高い。
 ただ『ソウ』の最初のゲーム、『キューブ』の様な遊び……これらをずっと観てみたいと思ったことはないだろうか?それが『エスケープ・ルーム』なのだ。色々とギミックを凝らした部屋が次々登場し、飽きずに楽しめるから驚きだ。どんな部屋かはキモになるので書きませんが、残酷描写に拘らない創意工夫って大事だなあ・・・。

あくまで軽く

Logan Miller in Escape Room (2019)
苦痛の表現も最小限

 本当にツイストが無いのか?と言わればある。使い捨てキャラといえども、6人の個性付けには意味があるし、劇中登場する何気ない言葉が、ひょんな事に活用されていたり、ちょっとしたイタズラ心もある(たとえば脱出ゲームを主催する会社の名前がミノスである等)。しかし大きな意味は無く、物語上必須ではない。残酷描写についても前述のとおり、人体破壊や苦痛を感じる場面は皆無。(実はこれにも意味はアルのだけれども)とにかく軽いのである。これが評価の分かれ目だが、こんな軽さを持つ脱出ゲーム映画は、これまで有りそうで無かった。過剰な残酷描写や作家性を期待しなければ十分楽しめる。ただ、エンディングについては不満が残るかもしれない。海外盤BDでは別エンディングを観ることができる。僕は、この別エンディングの方が好みだ。

原題:Escape Room 2019年 米国 100分(IMDB
2.5/5

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