Murder is an Art

作品データ

Evidence / 2013年 米 / 監督 オラントゥンデ・オスサンミ 脚本 ジョン・スウェナム / 出演 スティーヴン・モイヤー、ラダ・ミッチェル、トーレ・レヴィット、デイル・ディッキー、ノーラン・ジェラードファンク、ハリー・レニックス、ケイトリン・ステーシー
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レビュー

ネバダ州のガソリンスタンド廃墟で大量殺人事件が発生した。捜査員のバクエスとリース、ジェンソンはエンジニアのゲイブとともに、現場から回収した2台のビデオカメラと数台の携帯電話に残された動画を元に事件解決に挑む。
  
事件は惨憺たる状況だった。トーチで体をバラバラにされた挙げ句焼き殺されたり、メッタ刺しにされたり、顔面を千切っては投げ千切っては投げされたりと残酷極まりない。
彼らは同じバスに居合わせた運転手と乗客、運転手ベン、大量の金を持った中年の女カトリーナ、3人のベガス旅行者リーン、レイチェル、タイラー、息子へ遭いに行く途中の女ヴィッキー、10代の男の子スティーヴの7人。ベガスへの道中、バスが原因不明の横転、助けを求めて廃墟となったガソリンスタンドへ立ち寄り悲劇に見舞われたのだ。
  
最初の犠牲者はスティーヴン。一行が廃墟を彷徨いているところに、突然メッタ刺しにされた状態で建物から走り出てきたのだ。錯乱したまま全員の目の前で絶命するスティーヴン。突然現れた自分たちを狙う殺人者におびえる一行。犯人はトーチマスクを被っているため正体は不明、トーチを使って次々と残虐に無力な彼らを血祭りに上げていく。
  
ヴィッキーはトーチでバラバラに解体された挙げ句焼き殺され、カトリーナは顔面を引きちぎられて殺される。レイチェルも抵抗むなしく焼き殺されてします。全員殺されたかと思われた事件だったが、リーンは無事、タイラー、ベンの2人は命は助かったが重体。病院に担ぎ込まれていた。

リースとバクエスは、手慣れた物腰で、サクサクとリーンやヴィッキーが持っていたデジカム、各自の携帯動画を分析し、犯人を追い詰めていく。彼らの手腕は確かな物で、タイラーはリーンにプロポーズを断わられヤケなっていることやカトリーナが大量の金を持ち、夫を殺そうとしていたこと等、次々と判明する。しかし、確信に迫るような画像が見つからない。
  
そんな折、今回の証拠映像がTVで放送されてしまう。「誰がリークしたのだ?」エンジニアのゲイブは「ハッキングされてもいないのに、そんなことあるわけないだろう!」と言う。そう、リークしたのは犯人。彼(彼女?)は、捜査員への挑戦状として証拠画像を現場に残したのだ・・・。そして、生き残りのリーンの話から決定的な画像と手に入れた彼らは、犯人をタイラーと断定するのだが・・。

ネタバレ1 ネタバレ2 ネタバレ3 ネタバレ4

去年も同じタイトルのPOVを観たような気がしますが(エビデンス/第6地区)、今作はモンスターは出てきません。トーチを片手にトーチマスクに耐火スーツを来た様子のおかしい殺人鬼が大暴れします。ファウンド・フッテージものは、近年、アホほど量産されており、まさに玉石混交の状態。しかも”石”ばっかりなのでPOVというだけで敬遠する向きも多いジャンルとなっている。僕も大量のPOVを観ているが殆どが苦行のような時間を過ごしているのが実際です。しかし、本作は"アタリ"!
  
基本的にはリーンが持っていたデジカム映像をメインに他のカメラ画像をそれを保管する形でストーリーが展開していく。POVはどの作品も「見つかった画像を時系列に並べ直した物を淡々と流し、肝心な物は見切れてしまう」ものだが、本作は捜査官とエンジニアが雁首揃えているので、片っ端から修復、鮮明化してしまう。つまり、今までのPOVで掻きたくても掻けなかったところにガンガン手を突っ込んでボリボリと掻いてくれるという展開だ。

フッテージをダラダラ流すのではなく、フッテージ自体の解析を行うメタ視点からを描かれたありそうでなかった内容。いわばメタPOV。2人の捜査官と1人のエンジニアが壊れた映像を次々と修復し、事件のあらましを次第に明らかにしていく過程はかなりサスペンスフル。事件発生直後から始まるため、捜査も同時進行に行われるのも面白い。カトリーナの夫が怪しいとなれば即彼の所にSWATが突入、死体に新しい証拠があると解ればモルグにダッシュといった具合。このメタ視点を十分に活用し、最後にはSAWの様なぶっ飛んだオチが待っている。このオチってのがまあ、古風というか「次はお前だー!」的なちょっとイラっとさせるもので、賛否がわかれるところだろうなと思います。
  
僕は、トーチでバッサバッサと四肢を焼き切るシーンが斬新すぎてそれだけで満足ですけど・・。
本作の特徴としては、もう一点、バレットタイム(今更この言葉を言うのもアレなんですけど)の多用が上げられる。証拠画像ではさすがにそれは無いのですが、捜査・分析シーンは常にカメラがグルグル左から右に移動している。冒頭、現場検証のシーンも全員が静止状態でカメラがグルグル回る。分析シーンも同じ。なんでこんな編集をしたのが全く意味がわからないんですけど、あまりにも多用されるので、楽しくなってきます。・・たぶん意味なんて無いんだろうなあ・・・。
  
↑無意味にグルグル回るよ!!!

監督はオラントゥンデ・オスサンミ。「THE 4TH KIND フォース・カインド」の監督です。この野郎は、4年経ってもPOVとはよっぽど入れ込んでいるのか。というか「THE 4TH KIND フォース・カインド」て、撮り方は良かったんだが、内容があんまり過ぎて評価散々だったのに、よく企画通ったもんだ。ストーリー自体は脚本を担当しているジョン・スウェトナムさんの2年前に制作した短編が元になっている。

監督で避けられそうな作品ですが、これはお勧め。国内版が出そうな雰囲気。

あ、そうそう。ポスター、格好良いです。

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